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#10

ゴードンに連れられ基地の会議室を出て、外のジープに乗せられ再びアーリィの屋敷に向かう。

アキ・トシ・カガミは、ゴードンが運転する車両に乗る。

「長い時間待たせてすまないな、アキ団長殿。そう言えば部下からネクティア周辺の警備に出て、キメラを討伐してくれたとか」

急にネクティアから外に出た話をされ、アキは「うぇ?!あぁ~、う~ん」と戸惑っていると、後ろの席に座るトシが「高いぞ」と一言いう。

するとゴードンは「ハッハハハ!」と笑った後に

「これは手厳しいなトシ殿。だがまだ契約を交わしていない以上、これはサービスと取らせて貰うぞ」と楽しそうに答える。

「それにしても随分騒々しいといいますか…」

カガミが基地全体を見ると走り回るパイロットや兵士に、機体の整備と補給を急がせる整備士達。

まるで…

「これからまた、戦闘でもするような雰囲気だな」とトシが呟く。

「その通りだ。詳しくは屋敷に着いたら話すが、先程ネクティアを襲ってきた連中なのだがな、我が国の国境付近にある【オータム要塞】を占拠したとの報告が上がってきた」

真剣に話すゴードンにアキは

「ネクティアを襲いつつ、その要塞を占拠したってこと?」

「そんなこと可能なんですか?」とカガミはトシに尋ねる。

「その要塞の規模がどれ程のものか分からんが、要塞と名前が付く位には武装はされていたんだろ?なら正直考えにくいな」

「それに彼等の機体の装備・兵員数を考えるに、ネクティアとオータム要塞?だっけ、両面作戦を行えるとは思えないんだが」

「アキ団長殿の言う通りだ。我々もその結論を出したのだが、オータム要塞とは連絡が取れず、送り出した偵察部隊も帰らぬ状態だ」

「俺達に偵察の依頼をしたいと?」

トシがそう聞くと、ゴードンは首を振り

「いや、偵察は既にスカル・ルージュ隊から第2陣が出撃し、間もなく帰還するはずだ」

「なら何を?」アキが聞き返すと

「各部隊長を集めて出した結論は、何処かは不明だがDキャンパーを利用し、このネクティアを奪い取ろうとしている他国の勢力がいる…その結論に至った」

「俺達にもそのオータム要塞奪還作戦に参加しろと、そう言いたい訳だ」

トシは納得したと言いたげに車のシートに深く座り込む。

だがゴードンは

「いや~、実を申せばその……なんだ…それとも少々違うのだ、トシ殿」

その言葉を聞いてアキが

「話が見えないな。現状の事を考えるのなら、奪還作戦への参加依頼が普通の考えと思うが」

話を続けようとしていたら、屋敷に着き

「着いたな。続きは中で話そうアキ殿。既に会議室には、姫様含めて他の者達も集まっているはずだ」


屋敷前に車両は止まり、アキ達も降りる。

屋敷の中に入り最初に案内された会議室に行こうとしたら

「すまんがそちらではない、こっちだ」と言うゴードンにカイヤナイトメンバーは続く。

最初に来た部屋とは違い、3階中央の広い部屋に案内される。

扉に近づくと、言い争う声が大きくなる。


「この数では無理だ!そちらの隊から人を出せんのか!!」

「人手不足はこちらも同じだ!コバルトの整備すら間に合わない状況なのだぞ」

「だが、今行動を起こさねば、取り返しのつかない状況に」

「そんな事は分かっている!!!」

「いっそのこと防衛戦力も投入するのはどうだろうか?」

「馬鹿を言うな、ネクティア周辺のキメラはどうする気だ」

「やはりコルレットに応援要請を」

「それこそあり得ん!姫様の暗殺を考えているような連中だぞ!!」

「口が過ぎますよ」


扉前までそんなやり取りが聞こえてくる。

ゴードンが扉前に立つと、兵士が扉を開ける。

すると会議室に居た全員が、こちら側に注目する。

「姫様、アキ団長達をお連れしました」

そう言い、部屋の中に案内されるカイヤナイトメンバー。

部屋の中には大きな円型のテーブルがあり、窓際にアーリィが座っており

カガミを見ると笑顔で、手を振る。

カガミも気まずそうに、軽く手を振り返す。

部屋で会議に参加していた兵士達は老兵が多く、その殆どが娘に手を出す悪い害虫を見るような目でカガミを睨んでいた。

リアルなら恐怖を感じていたかもしれないが、今は注目されて嫌だな程度の気持ちだ。

そう思うとやはりココは、アーマード・ブレインの世界なのではないかと思わせてくれる。


「それでは彼等を含めて話を進めていく。カイヤナイトの方々には多少状況を話したが、始めから説明を頼む」

ゴードンがそう言うと「分かりました」と軍礼服を着ている、ゴードンと年齢が同じくらいの男が立ち上がり説明をする。


「昨晩のネクティア強襲とほぼ同時刻に、我が国の国境付近に位置するオータム要塞が何者かの夜襲をうけ、完全に占拠されました。敵の戦力ですが、Dキャンパーの使用していたコバルトと、オータム要塞に配備されていた機体が使用されています」

テーブルの中央にホログラムが映し出される。

ホログラムに出されたのは、要塞の外観・敵が使用しているコバルトそれと…

「あの機体は何ですか?初めて見るんですけど」

カガミは小声で隣のジャガーに尋ねる。

ホログラムに映し出されていたのは二足歩行型の機体ではなく、戦車の様なタンク型で左に大型の四角い盾を装備し、頭部はパトカーなどに使われているパトランプの様な形状をしている。

「あれはABF-02-1型・ポリスガードタンク 通称ポリタン。コバルト同様、第一世代機型アーマード・ブレイン。見ての通り戦車の上に人型兵器を載せたような機体だよ」

「へぇー、弱いんですか?」

「弱い……う~ん、運用の仕方次第かな」

「でも第一世代機なんですよね?俺達の機体と比べたら、敵にならないんじゃ」

「まぁ、基本的にはその通りなんだけど、世代差だけで強さが決まるとは限らないよ。さっきも言ったけど、運用次第では化ける機体もある。このポリタンはその分類に入る機体だと思うよ」

カガミは成る程と言った感じで、再び話を聞き始める。

「他にも未確認ではありますが、大破している第1偵察部隊の機体データから所属不明の機体を数機確認していた事が分かりました。データは破損しており完全な修復には、時間が必要になります。ですが第2偵察部隊の報告では、特に目立つ機体は見当たらないとの報告も受けています」

「未確認機が存在しない(てい)で動くより、居ると想定して動く方がいいだろう」

「要塞に配置されている固定武装は?」

アキとハヤテがネクティア陣営に尋ねる様に話をする。

「城塞の扉上部と端に、大型ビーム砲台が3門、城塞通路には対空機関砲と迫撃砲が配置され、城塞内部には誘導式ミサイル砲台が配置されています。因みに城壁には、扉を開けずに機体を城外に搬出する為の下降器が存在します」

「となると持久戦はお互いキツそうだね」

「最もこっちの戦力がどれほどか、俺達は知らされてない訳だが」

ムックとハルはネクティア陣営の人間を見回すように目線を合わせようとするが、ほとんどの人間が視線を逸らす。

ゴードンが急に立ち上り

「ここから先の話は、我々に任せよ。お前たちは戦力の再編成に努めるのだ」

「ですが師団長!彼等を説得せねば……分かりました。お任せ致します」

程なくして部屋に居た軍人達は、部屋を後にした。

部屋に残ったのはカイヤナイトのメンバーを含めた、アーリィ・ゴードン、そして意外な事にスカル・ルージュ隊のメグミ中隊長が残っていた。


そしてゴードンは覚悟を決めたかの様に、一度深呼吸をしてアーリィの方を向き(うなず)く。

アーリィも真剣な表情で頷き返す。

(わたくし)たちネクティアの状況を正直にお話いたします。ゴードン師団長、お願いします」

ゴードンは「はっ!」と返事をしアキ達の方を向く

「恥ずかしい話だが、現状の戦力で城塞奪還作戦は保々不可能な状態だ」

それを聞いて流石のカイヤナイトメンバーも予想していなかったのか

「はい!?」「えぇー!」「いやいやいや~」「噓だぁ!」「マジで?」と

トシ・ダイ・ベンベン・ハル・アキは驚愕するしか無かった。

「どういうこと?」とエムジーが聞くと

「アキ団長達に森で助けられた時点で、既に私の率いていた部隊の半数近い戦力が失われていた状況でな。そこに昨晩の連戦で稼働機はおろか、パイロットが居ない状況なのだ。

今動かすことの出来る部隊は、メグミ中隊長率いるスカル・ルージュ隊のみになる。

だがその戦力も万全の状態とは言い難く、動ける部隊の者をスカル・ルージュ隊に臨時編成してもオータム要塞攻略は不可能だ。再編するにしても動ける機体を集めるのに、3日程掛かるだろう」


そこまで聞いてハヤテ・ダイ・ジャガー・ベンベンは

「言いたいことが、分かってきたぞ」

「成る程。でも、それは流石の俺達も…ねぇ?」

「う~ん、俺はアキさんの判断に任せるよ」

「でもこれキツくない!?」と言う。


話を聞いてもカガミには理解できず、ムックとアキの方を向き

「えっと、どう言うことですか?」と聞く。

「簡単な話。俺達だけで、オータム要塞とやらの扉を開けろって事だよ」

「それで扉が開いたら、メグちゃんの率いる中隊が中を制圧するってことさ」

「待って下さい!それって俺達の被害多くないですか!?」

トシとハルは続けて

「そもそも敵も手に入れた要塞を、簡単に引き渡さないだろ。そうなれば中に居る敵も全部出てくるはずだ、つまり事実上敵の全戦力が相手になる」

「おいおい、ゴードンのおっさん!流石に無茶が過ぎるぜ」

ゴードンは申し訳なさそうに

「無茶を言っている自覚はある。だが現状の我々には、作戦を遂行させられるような戦力はない。可能な限りのバックアップと報酬は約束しよう。アキ団長!どうかこの依頼を引き受けて頂けないだろうか」

「私からもお願い致します。どうかこの国をお救い下さい」

ゴードンとアーリィは、アキとムックに頭を下げて頼み込む。

「う~ん、助けてあげたいのは、やまやまなんだけどねぇ…」

「俺達も自分達のことで、手一杯なんだが」

ムックとアキは頭を掻きながら、他のメンバーを窺う


トシやジャガー・ハルは

「報酬次第だな」

「アキさん達に任せる」

「綺麗なおねぇちゃんに頼まれたら断れないな」と、割と作戦参加に反対ではなかった。


逆にエムジー・ベンベン・リュウは

「無理ですよ。砲台に狙われながら、あの分厚い対爆壁(たいばくへき)の扉を開けるなんて」

「門の前は約1キロ半にわたって、何も無い状態だしな。隠れる事が出来ない以上、常に前衛組みは走り回る必要があるしな」

「一応その先には森があるみたいだけど、森の中にはキメラも居るだろうから隠れるには難しいな」と反対気味だ。

そこにゴードンがメグミの方を向き

「貴殿も頼まぬか!ネクティアの行く末が、掛かっているのだぞ!!」

「私は……未だに反対だ」

「なんだと!貴殿は今の状況理解しているのか!?」

ゴードンは怒り心頭の様子だが、メグミもどうすれば良いか迷っているようだった。

「なぜ反対か聞いてもいいですか?メグミ中隊長」とアーリィは冷静に尋ねる。

「彼等に実力があることは、承知しています。ですが、帝国側の人間の可能性もあります。それと個人的な理由が一番になってしまいますが、やはり私は傭兵を信用する事ができません」

メグミの本心が話された事で、アーリィとゴードンも困った様子になる。

カガミ達もメグミの境遇を聞いていただけに、彼女が現状を理解しつつも傭兵に背中を預ける事に抵抗があるのは理解していた。


そこに今まで考え込んで会話に参加していなかった、二人が

「因みになんですけど、要塞の扉は壊してもOK?ですか」とダイの間抜けな質問が空気を変える。

「待て、この分厚い扉を壊す気か!?」

「ダイさんの頭が先に壊れたか」

「流石にそれは無理なんじゃ……」と、トシ・ハル・カガミは呆れ気味に言う。

だがそこにハヤテが

「いや、ダイ君が俺と同じ考えで”アレ”を使う事を想定してるのなら、俺達だけでも要塞攻略は可能かもしれない」

「それは本当かい?」「それは誠か!!!」アキとゴードンはダイとハヤテの二人に聞く。

「俺が言った時と、ハヤテ先生の時とで反応が違うのが納得いかないですが、ネクティアの協力があれば可能です」

「まぁ、ダイ君が信用無いのはいつもの事だし、日頃の行ないが悪いのがいけないとして、話の内容から考えても同じようだね」と答えるハヤテ。

横でダイが「なにぃー!日頃の行ないなら、ウチのコミュで一番いいでしょうが!!」と怒り気味に言っていたが、それを無視してハヤテが話を進める。

ハヤテはアーリィに

「アーリィちゃんが多分一言【いいよ】って言ってくれれば、俺達だけで要塞はどうにか出来ると思うよ」

「分かりました。いいですよ」と笑顔で返す。

「よっしゃー!許可がおりました!!」と右腕を掲げるハヤテ。

だがそこに慌てた様子で止めに入るゴードンとメグミ

「お、お待ちください、姫様!?流石に話の内容を聞かずに、許可を出すのは如何なものかと」

「それと先程申しましたが、彼等が帝国のスパイである可能性も有るのですよ!」

だがアーリィは

「今の(わたくし)たちはカイヤナイトの皆さんから出された条件を、断れる立場に無いのはゴードンも理解しているでしょう」

「それは…そうなのですが」

「それに帝国のスパイならば、危機に陥っていた私たちを助ける理由などない事くらい、メグミ中隊長ならば理解しているでしょう」

「え…えぇ、まぁ」

「それに窮地に陥っていた私たちを救って下さった、カガミさんがネクティアに不利益をもたらす事をすると思いますか?」

「それはもち……うん?」とメグミは一瞬考え込み、カガミの方を向く。

カガミは咄嗟に視線をそらす。

すると隣に座るエムジーが

「良かったなモテて」とプッと噴き出す様に笑い

ベンベンはヒュ~と口笛を吹く。

「茶化さないで下さいよ」と返すのが、今のカガミには精一杯のようだ。

「話が脱線しとるよ。ハヤテさん、それで何の許可が欲しいの?」

ムックがハヤテに尋ねたが

「南側基地にある、格納庫のスクラップ全部プリーズ!!!」とダイが代わりに答える。

トシとハルの呆れ気味に

「まさかあのゴミを本気で欲しがっていたとは!?恥ずかしい、小遣いやるから新品のネジでも買ってこい」

「なんだダイさんそんなゴミが欲しいのか、腐ったイカ送ってやるからそれで我慢しておけ」

「誰がゴミを欲しがるか!あそこにあったのは、ゴミなんかじゃないんですぅ~!!リサイクル可能な重要資源なんですぅ~!!!バーカー、バーカー」と子供じみた返しをする。

そこにハヤテが

「一応俺からも言えば、確かにあそこのスクラップをくれればどうにか出来る」

それを聞いて今度はリュウとアキが

「スクラップってゴミだろ。二人揃ってゴミブラザー」

「ハヤテさんダイ君、ラーメン奢ってあげるから、ゴミはポイしなさい」

「待て!俺はダイ君と同レベルか!!」

「その発言は俺に失礼だー!!!」

こんなやり取りの横でジャガーが、何故ダイとハヤテが格納庫のスクラップがあれば要塞攻略可能と言ったかを理解する。

「あぁー!レブナント光学砲にあの魔改造をするのか!!」と納得する。

カガミは格納庫前で見た大型の大砲を思い出す。

「レブナント光学砲って、格納庫前でハヤテさんが言っていた、あのデカい大砲の事ですよね?あれがあれば要塞攻略が、本当に可能なんですか?」

「レブナント光学砲そのままじゃ、あの扉を破壊することは多分無理だね。だから改造するんだよ……普通はしない改造を…ね」

ジャガーがニヤリとすると、アキとエムジーの顔色が悪くなり、ムックに至ってはトラウマを思い出したような顔だ。

カガミは小声でエムジーに

「なぁ、どうした?なにかあったのか?」

「去年くらいだったか。あの三人が重力爆薬弾(グラビトンボンバー)って名前の爆薬弾を作ったんだが、実戦テストを兼ねて他のコミュニティーと戦ったんだけど、その爆発に俺とアキさん・ムックさんが巻き込まれたんだわ」

「マジか、よく無事だったな」

「無事じゃねぇーよ」

エムジーは珍しく、怒り気味の顔でカガミに凄む。カガミも普段あまり見ないエムジーの怒り顔に「お、おう」としか、返すことしか出来ない。


思い出す度に、怒りがフツフツと沸いてくる。そんな事を言いながら、エムジーはカガミに話し始めた。

「ちょうどオレ・アキさん・ムックさん・ダイさん・ハヤテさん・ジャガーさん、達でインした時で、あの3人が『完成した新作の武器を試したいから、コミュ戦に行きたい』なんて言って、ハヤテさんの知り合いが所属しているコミュと6対6のチームデスマッチをしたんだ」





「おっしゃー!ジャンケンで誰が、コイツを使うか決めますか!!!」

ダイのテンションは高く、やたらに右腕を回している。

「俺達もジャンケンに参加してもいいんですか?」

エムジーがジャガーに尋ねる。

「勿論!誰が使うか公平に決めるのが、ウチのやり方だからね」

「あんま待たせても相手に悪いから、ちゃっちゃと決めようか」とアキが言い、円になりジャンケンをする。

新しい兵装と聞き、全員が楽しみにしつつ誰が先に使うかで相談した結果、ジャンケンに決まった。

ジャンケンは何戦かして、結果ムックが新作武器を使う事になった。

トレーラーの荷台には、13メートルクラスの大型スナイパーライフルが積まれている。

使い方の注意事項をハヤテ・ジャガーからムックは聞いていた。

その横ではカイヤナイトの保有する予備機、コバルトⅡを調整しているダイにアキとエムジーが、新作スナイパーライフルについて質問する。

「あのライフルはどんな武器なんだい、ダイ君」

「見た感じだと、実弾兵器のようですね」

「う~ん、実弾兵器ではないよ。弾倉的には、確かに実弾の分類だけど。いや、どちらかと言えば、グレネードランチャーかな?」

作ったはずのダイも分類に分けようとすると、説明しずらいのか曖昧(あいまい)な答えしか返って来なかった。

「説明するよりも、見て貰った方が早いかも」と答えるだけで、ダイはコバルトⅡの調整に戻る。

因みに今回使うコバルトⅡは、通常のコバルトとは違い第二世代機にバージョンアップした物だ。

外見の違いは人間で言う手、指の本数が3本から5本に変更されているくらいなものだ。

中身もジェネレーターや基礎フレームに一部違いがあるが、外見やコックピット内に大きな変更点は見当たらない。

だがこの時エムジーのコバルトⅡには、新型のアサルトとバスターソードが備え付けられていた。

イベント上位者に配布された武器で、今日初めて使う。


全員の準備が終わり、配置に着く。

前衛にアキ・エムジー、その二人のフォロー役にダイとハヤテが着き、遠距離狙撃にムック、その護衛にジャガーの配置。

場所は演習場で、他の勢力から邪魔が入らないようになっている。


演習場に取り付られているスピーカーから試合開始の、ホイッスル音が鳴り響く。

エムジーとアキのコバルトⅡが、敵の機体に肉薄(にくはく)し近接攻撃を仕掛ける。

エムジーのコバルトⅡは、バスターソードで相手の機体と何度か打ち合い、右腕部をタイミングを見計らい一撃で切り落とす。

【このバスターソード、切れ味が凄くいいな。】

【おぉ~、そいつは良かったじゃないか。こっちはビームソードで斬り合いだから、不利かもしれん。一度ダイ君達の所まで下がって、銃の撃ち合いで相手の装甲削る戦法に変えるよ】

エムジーは【了解!】と返事をし、その会話を聞いていたムックが【援護任せて】と言いムックのコバルトⅡは、弾を装填し敵の機体に狙いを定めて撃つ。

すると弾丸がアキのコバルトⅡの横をすり抜け、敵機のシールドに当たり金属を引っ搔く様な音が響渡ると、1メートル程の黒い球体が現れ、そこに周辺の物が吸い込まれる様に引っ張られる。

直撃したパイロットは【ぬぅわぁぁぁぁ】と奇声を上げて、よじれる様に機体が吸い込まれると、全員の機体画面に撃破1と表示される。

その様子を見てムックは

【おぉ~!凄い威力だね】と驚き。

アキは

【威力は凄いけど、結構周りを巻き込むなぁ。撃つ時は一言頂戴ね】と警戒するように言う。

【でも凄い武器を作りましたね。これで来週のイベントは楽になりそうですね!】

エムジーがそう言うのに対し、ダイ・ハヤテ・ジャガーは逆の反応で

【あれ?あんな周りを巻き込む感じに作りましたっけ】

【いや~、俺は記憶に無いぞ】

【待てよ、想定した物とここまで大幅に違いがあるなら、ライフルの方は無事なのか?】

ムックの近くに居たジャガーは、すぐに大型スナイパーライフルを見ると、スナイパーライフルの砲身と本体部分に、小さくスパークしているのが確認できた。

【よっし!次撃つよ】とムックが無線越しに全員に伝え【OKだよ!ムックさん、かましてやんな!!】とのアキの返事を聞き、ジャガーをはじめ、ダイとハヤテが焦る様に『待った!ムックさん!!!』と大声で止めに入ろうとしたが一足遅く、ムックは大型スナイパーライフルのトリガーを引いてしまったのだ。





「その後が大変でさ。スナイパーライフルは弾を発射した後に大爆発を起こし、ムックさんはその爆発に巻き込まれて自爆判定。発射された弾は何故か暴走していて、最初よりも威力がアップするはで、俺とアキさんはその爆発に吸い込まれて誤射撃破判定になった」

エムジーは疲れた様にそう話てくれた。

「なんて言うか、そのぉ……大変だったな」

「一番腹が立つのは、バスターソードとアサルトが消えて無くなった事だ。アサルトに関して言えば、一度も撃ってないから威力が高いのか、レートがいいのかも分からず仕舞い」

「ネットとかに情報は無かったのか?」

「有ったぞ勿論。内容はレートは悪いが、威力はかなりいいらしい。弾持ちは普通だって、コメントが上がってたよ。つまり使わないと自分に合うか合わないか、分からない類の武器って事が分かっただけだ」

その話を聞いてカガミは苦笑いをしながら、ある疑問にあたる

「でもそんな兵器を、ダイさん達はまた作ろうとしてる訳か?今回の作戦って、結構ヤバいレベルなんだよな」

「あぁ、そうだよ。ねぇ、ダイさん!止めましょうよ。絶対にロクな結果にならない」

エムジーは嫌そうに、ダイに言い

「大丈夫!あのあと色々と調べて、実験を繰り返して、なんであの時あんな事になったか分かったから」

「まず一つ大型スナイパーライフルじゃ強度的に持たない事が分かった。二つ目は弾に積まれた、リアクターコアが熱に反応して暴走したこと。これを改善すれば、安全に運用ができるさ」

ダイとハヤテの説明を聞いても、その場に居た全員が不安の残る顔になっていた。

「なんですかその顔は!?なら他になにか案がありますか?無いならこの方法でいきますよ!」とダイは言ったが

「その前に引き受けるかどうか決めなきゃだろ?」とハルが言う

「ダイ君とハヤテさんの反応からして作戦参加は賛成だろうし、カガミ君も賛成なんでしょ?」

ムックがカガミにそう聞くと

「えっ!?賛成か反対か聞かれたら、そりゃ賛成ですけど…。なんで分かったんですか?俺一言もそんな事言ってないですよね」

「カガミ君はもう少し腹芸を覚えた方がいいよ。ハルさん、これで多数決的にも決定のようなもんだよ。そうでしょ?アキさん」

ムックがそうアキに聞くと

「そうだね。それにここで助けなかったら、目覚めが悪そうなだしね。ベンベンさん達もそれでいいかな?」

「アキさんが決めた事に、俺が反対するわけないじゃないですか」

「皆がやる方向性なら、俺もやるさ」

そして最後に全員の視線が、エムジーに注がれる。

エムジーは、ため息をして

「俺も、やりますよ。別に人助けが嫌な訳じゃないですから」

渋々といった感じではあったが、これで全員の作戦参加が決まった。

「それじゃ作戦会議といきますか」

ジャガーは立ち上がり、部屋にあったホワイトボードの前に移動した。


「取り敢えずレブナント光学砲の改造後の説明から」

ジャガーは自分の携帯端末を操作しテーブルの中央に出ていたホログラムに、レブナント光学砲の改造完成図を表示した。

長さは24メートル・幅7メートルの砲台だ。

「名称は遠距離重力砲撃大型ライフル・ルヴニール」

「ちょい待ち!?砲台?ライフル?どっちなの」

ジャガーが言った名称に疑問を持ったリュウが、ホログラムを見ながら聞く。

「事細かな説明をすると長くなるから簡潔に説明すると、光学砲台を実弾仕様に無理やり変更しつつ、砲弾の様に放物線を描くことなく真っ直ぐに発射できるようにした物だと思って」

「それとライフルと名称変更しただけあって、アーマード・ブレインで狙撃する必要があるからそれも説明しておく」

ジャガーの説明に続いてダイが話しだす

「このルヴニール自体には射撃プログラムが搭載されてないから、アーマード・ブレインによる直接操作が必要で、尚且つ射撃後の冷却操作もパイロットでやらなきゃいけない欠点がある」

それを聞いてアキは

「面倒な兵器だね。自動には出来ないの?」

「俺達もそれは考えたんですけど自動操作にしようとしたら、更に大型化しないといけないんで、現実的じゃなくなるんですよ」

「これが更に大きくなると、運ぶのが今度は難しそうだ」とゴードンが顎を触りながら話す。

「いや、既にこの大きさじゃ、運搬に問題があるだろ。トレーラーに乗せて運ぶにしても、目立ちすぎだろ」

「それなんだけど」とハルの疑問に今度はハヤテが答えた

「ルヴニールはパーツ分離型に設計しているから、台座を含めてパーツを4つに分けて、アーマード・ブレインに背負わせて運ぶ感じで」

ハヤテの言葉にカイヤナイトのメンバーが『はぁ~!!!』と驚く。

「運搬約の3人は決まってるから、残り一人を決める感じでか」

リュウがそう言い、他のメンバーも誰がやる?といった感じで話だしたが、ハヤテは続けて

「因みに今回は俺達の機体は別の物を運ぶ予定だから、こっちで役割も決めてる。それを今から言うぞ~」

ハヤテは携帯端末を操作し、中央のホログラムにカイヤナイトメンバーが表示される。

「まず今回ルヴニールの担当は狙撃能力の高い機体、ヘルハンターの使用は絶対条件になるから、トシさんが担当」

それを聞いてトシは嫌そうに「まぁ、そうなるよな。本当に大丈夫なんだろうな、そのルヴニールは」

ハヤテは答える事無く次の役割を言っていく

「月光 ムックさん・ヘルハンター トシさん・秋水 ベンベン氏・デュークス リュウさん、今呼んだメンバーは、ルヴニール運搬担当。次に號龍 アキさん・イヅナ カガミ君の二人は、ルヴニール運搬メンバーの武装運搬係。残りのハルさん、エムジー君は、先に偵察兼先導役。それで俺達支援機組みは、コンパクトガードを運ぶ」

すると中央のホログラムに、高さ8メートル・幅12メートルに表示された鉄板が、スライドし高さ12メートル・幅20メートル表記の大きさに変わる。

「あの短時間でよくある物把握して、作戦やら何やら考えるな」

トシは感心半分、呆れ半分に複雑な表情だ。

ハヤテ・ダイ・ジャガーは、顔を合わせして

「まぁ、普通じゃない?」「メカ愛ですかね?」「職業病みたいなもんかな?」と三者三葉に答える。

「因みにそのコンパクトガードって、なんですか?」

「カガミ君の前で使うのは、初めてだったかな。まぁ、分かりやすく説明すると、アーマード・ブレインが銃弾とかから身を守る為の物陰かな。ビームコーティングしてるから、結構硬いしね」

カガミの質問に、ジャガーが説明した。

そしてムックが

「取り敢えず、使用する兵器は分かったよ。それじゃ本格的な作戦の話をしよう」

「こちらとしては3日だ。編成と機体の用意に、もう少し時間が欲しいからな」

「本来ならば今日明日にでも、作戦を開始するべきなのだがな。時間が経てば経つほど、向こうに有利に運ぶだろう」

「ダイ君、ルヴニール制作にはどれくらい掛かる?」

メグミとゴードンの話を聞き、アキはダイに制作日数を聞いた

「そうですね。まぁ、3日で行けますよ。……全員の睡眠時間を3時間位にすれば」

「それは全員で作るって…事かい?」

「人手不足ですから」

それを聞いた全員が、疲れた表情に変わる。

ゴードンは場の空気を変えようと

「そ、それでは、ネクティアからオータム要塞までのルートを表示しよう。アキ殿達は、ネクティア周辺の地理を把握している訳ではないようだからな」

ゴードンはテーブルにあるホログラム操作盤を操作するが、上手く操作出来ないのか「うん?これだったか、いや…これか?」と言いながら操作していると、一瞬拡大された地図画面が出たが、すぐにネクティアとオータム要塞か映る位のちょうどいい画面になる。

「おお、ようやく出たか」とゴードンが言ったのと同時位に、アキが変な声を出すように

「ちょ、ちょっとタイム!?皆ちょっと集合!いいから全員集合!!」と自分の位置に全員を集める。

「なんだよアキさん、野郎とくっ付く趣味は俺にはねぇーぞ」とハルが冗談半分に言うと、アキは自分の携帯端末でホログラムの地図を拡大させる。

それを見てトシとハヤテは

「うん?」「あぁー、うん?」と顔を横にしたり、斜めに向けたりと忙しい動きになり

「まさか、えぇ~」「いやいや、そんな馬鹿な」と困惑する。

二人の様子を見ていたベンベンが

「どうした?二人して楽しそうにして」

だが、トシとハヤテは携帯端末を急いで操作するだけで、答える余裕がない。

「ダメだ、こっちの端末からじゃ表示されない」

「なぁ、ゴードンさん。もっと地図を拡大出来ないか?」

「それは可能だが…ちょっと待ってくれ」

トシに頼まれ、ゴードンは再びホログラム操作をする。

そして

「このくらいで構わぬか?トシ殿」とゴードンが言って、中央のホログラムに表示されたのは……



『えっ!?これって……日本!!!』



全員が口を広げ目にしたのは、形が大きく変わった自分達のよく知る島国だった

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