採石場
「やっちまった……無免許運転……」
採石場、たどり着いたシオンはよろよろとバイクから降り呟く。
「運転して無いから大丈夫、多分……で、ヴォイドは……」
さてらいとはガシャガシャと音を立てながら人型に戻り、シオンの様子を意に介さずあたりを見回す。
「いた!」
さてらいとが指差した、切り出され岩肌が露出した山の側面。
銀色の卵が突き刺さり、脈打っていた。
「ほんとだ。よし、先手必勝!というわけでなんか飛び道具とかない?」
「そのへんに転がってる石で良ければ。」
「ないっていうんだそれは。」
石程度で死ぬ相手ならどれだけ良かったか。
「あ、そうだこれ。」
と、さてらいとはシオンに歯車のようなもの──ウエポンギアだったか?を手渡す。
「スタンギア。全身に電撃を纏わせるから攻防どっちにも使えるよ。」
「ほー……便利な……」
シオンはギアを受け取り、チェンジャーの窪みに装填した。
銀の卵はその間も脈打ち続け──突如、止まる。
「来るか……!」
「みたいだね!」
シオンとさてらいとは並び立ち、構える。
ピキピキと銀の殻がひび割れ──
「フシュルルルル……」
数日ぶりに聞く不快な息遣いと共に、灰桃色の怪物が孵化する。
直角の斜面に張り付いている……握力なのか、それとも他の要因だろうか。
「来るよ、シオン!」
「ああ!」
怪物はシオンたちの姿を認識し、斜面から飛び降りる。
土煙と共に地面が揺れ、5つの目がぎょろりと二人を睨んだ。
「フシュルルルル……!」
怪物は間髪入れず、長くブカッコウな腕を振るう。
「そんなものに、当たってやるかぁー!」
シオンは叫び、ひらりと攻撃を回避。そのまま電気を纏った拳を叩き込んだ。
ジジジジという電流音とともに、怪物がのけぞる。
「よし、効いてる!」
シオンは拳を振り抜き、怪物は地面をバウンドしながらふっとばされた。
「そこだ!」
サテライトが跳躍し、右手の真っ白な剣を全体重をこめて怪物に突き刺した。
鍔まで刺さった剣を引き抜かず、サテライトはどこからか新たな剣を取り出す。
ジジジジという音が断続的に聞こえる。
どうやら剣にも何らかの電撃装置が組み込まれているらしい。
怪物の動きが鈍る──
「はあっ!」
シオンの蹴り、怪物は地面を転がり、動かなくなる。
その体表が灰色に変わっていく。




