紺の疾風
「さあ、始めましょうか……」
と、ウプイリはシオンに突進する──回避する間もなく、その距離が詰められる。
ウプイリのパンチ、いや、腕を振り回しているだけだ──銃弾のような拳がシオンを吹きとばす。
追撃の蹴り──サッカーの蹴りのような、およそ格闘技とは呼べないような代物が──雷光のような速度でシオンを上空に蹴り上げる。
「ぐっ……!」
跳躍したウプイリの乱雑な踵落とし──シオンは地面に叩きつけられ、アスファルトに放射状のひびが入る。
「強い……!」
技の鋭さはおろか技そのものがないと言って過言ではない、身体能力だけに頼った戦い方──だが、力も速度も桁違いだ。
──まるで獣と戦ってるみたいだ。
シオンはひび割れたアスファルトの上、ふらつきながら立ち上がろうと──よろめき、膝をつく。
──くそ、ダメージが残ってるか……
ここで動けないのは命取りだ。シオンは焦り、立ち上がろうとするがふらつく足は言うことを聞かない。
「やはりヒーローシステムは弱い……ハンドルギアこそ、人類の進化の鍵……貴方はそろそろ用済みですかね……余計な事をされる前に……」
ウプイリはマントを翻し、右手を真横に掲げた。
その右手に黒い煙が集まり、鋭く長い剣を形成する。
ウプイリは剣を構え、シオンに迫る──
「させるかよ!」
疾風のように現れた紺色の影がウプイリの背中を蹴り飛ばし、不意を突かれたよろめかせる。
「随分とボロボロだな、イモムシ!」
シオンに手を貸し、立たせたのは紺の戦士、ロムルスだった。
「よぉ、ヒーロー。遅かったな」
と、シオンは皮肉めかして蒼に言った。
「誰がヒーローだ。俺は……まあいいや。あいつが何なのかは知らねえけど……」
蒼は構え、続ける。
「俺とお前なら、倒せない敵なんていないだろ?」と。
シオンも構える。
「少なくとも一人よりはマシだな。頼むぜ、ヒーロー!」
「だからー。誰がヒーローだっての……」
「一匹が二匹に増えようが、圧倒的な力の前には無力……そういえば、貴方も邪魔でしたね、千疋蒼……ちょうどいいので、まとめて塵にしてあげましょう……」
左手にも黒煙が剣を形成し、ウプイリは二刀をだらりと垂らすように構えた。




