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 「行くぞ!はあっ!」

先に仕掛けたのはロムルスだった。

力任せだが、鋭く速い踏み込みと蹴り──だがその蹴りは空を切った。目の前にいた偽シルバーマナがいない。

「何っ!?」

「キキキキキッ」

不気味な笑い声と共に、背中に衝撃。ロムルスは吹っ飛び、地面を転がった。

「ぐうっ……」

体勢を立て直し周りを見るも、偽シルバーマナはいない。

──逃げられたか……いや。

背後に感じる、確かな殺気。

──焦るな。感覚を研ぎ澄ませ。

蒼はマスクの奥の目をつぶり、空気の流れを感じる。

「キキキキキッ」「そこだぁ!」「キキッ!?」

背後に回り込んだシルバーマナの拳──それを見切ったカウンターの蹴りが、偽シルバーマナの胴に直撃する。

「よし、この程度なら……!」

勝ち筋を見出した蒼をあざ笑うかのように、銀の怪人は笑う。

「キキキキキッ……」

その体表、銀色の皮膚が灰色に変わってひび割れ、ボロボロと剥がれ落ちていく。

「なんだ……?」

「蒼……ワタシ……」

皮膚の剥離が終わった銀の怪物から声がする。タタラの声が。

「タタラ……正気に……」

ロムルスは安堵し、ゆっくりと銀の怪物に近づく。

「アッハハハハハハ!ハハハ!」

突如、銀の怪物の顔に真っ赤な口が開き、蒼をあざ笑う。

「なっ……」

突然の豹変にロムルスは固まる──その一瞬が致命的な隙を生む。

「アッハハハハハハ!」

友達の声で笑う化け物が、ロムルスの頭を蹴っ飛ばす。

「ぐう……っ!」

紺のヘルメットにピキピキとヒビが入り、割れた破片が散らばる。

「甘イネ、蒼。蒼。蒼。蒼。アッハハハハハハ!」

壊れたレコードか合成音声のように、怪物はタタラの声をもてあそぶ。

「タタラ……待ってろ……今……絶対に!」

蒼は……ロムルスは強く拳を握りしめる。

「うおおおおお!」

絶叫とともに突き出したがむしゃらな拳は、ひょいと銀の怪物にかわされる。

「当タラナイヨォ!」

「お前が、その声で!喋るなぁ!」

怒りを込めた蹴りも、怪物には届かない。

「コッチモ、行クヨォ!」

小さな銀の拳が、ロムルスの胴の装甲をビキビキと砕き、ヒビを入れた。

「ゲホッ……」

何かが潰れるような感覚。口の中にはぬるついた感触と鉄の味。

「まだだあ!」

ふらついた足でタックルをかけるも、当たるはずもない。

「遅スギルヨォ!」

ロムルスの背中に衝撃。べきべきと装甲が砕ける音。

──強すぎる。

敗北を悟った蒼の心に浮かんだのは敗北の悔しさや死の恐怖ではなく──

「タタラ……」

遠のく意識の中、蒼は想った。あの笑顔を。声を。顔を。髪を。





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