日々
翌朝。 シオンが眠い目をこすりながら作った野菜炒めをもそもそと食べていると、スマホにメッセージが届いた。
差出人はさてらいと。[話したいことがある]とだけ書かれていた。
[直接じゃなきゃ駄目なのか?]と返信し、シオンは食事を再開する。 今日の野菜炒めは火を通しすぎたのか、肉が硬い。
あまり間をおかず[なるべくなら。]と返信が来た。
[わかった、いつ、どこに行けば?]と返信。食事を再開。少し炒める量が多かったかもしれない。
[十時に、このあいだの隣町の富岡さんのところに。]と返ってきた。
[了解]とだけ返信し、シオンは皿に残った野菜炒めを掻き込む。
「さてと、食後の運動だな。」
と、シオンは着替え、日課のジョギングのため河川敷に向かった。
河川敷、ジョギング中のシオンは蒼とばったり出くわした。
「よお。昨日ぶりだな。昨日のあれ、お前も見たか?」
「あれ、って…?」
聞かなくてもわかる。おそらくは昨日の怪物のこと。 だがシオンと蒼は敵同士。教える義理もないのでしらばっくれるのが吉とシオンは判断した。
「見てないのか?隕石かなにかが山に落ちたの。」
「さあ?それがどうかしたか?」
「いや……知らないならいい。じゃあな。」
蒼は詮索することもなく、立ち去る。
「……?なんだ、あいつ」
何か知ってるような口ぶりだったような、そうでもないような。
「ま、いいか。」
薬品のような匂いが漂う病室。タタラは一人、震えていた。
──来てしまった。奴らが。
昨日様子を見に来た父、玄龍は神妙な面持ちで言った。
「奴らが来た。」と。それだけ。
──やっと素直になれたのに。やっとお友達ができたのに。こんなあっけなく、終わってしまうの?
蒼と話した昨日、そしてまた会えるはずの今日。そんな日々は、近くないうちに唐突に終わる──否。
── 終わらせない。絶対に。
タタラは拳を握りしめた。
私がこの街を守って……この日常の続きを紡ぐんだ。
タタラは握りしめたギアを眺める。
それは彼女の心に応えるかのように、微かに脈打っていた。