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説得

 「ヒーローショー?いいじゃん、やってみろよ!」

来た道を戻るうちに合流したキキ──もう 月極げっきょく仮面の格好はやめて、いつもどおりのジャージ姿だ──はシオンを激励した。

黒衣の男には逃げられたらしい。スタンガン的な武器を持った男と戦って無事だったと考えればとんでもないが。

「いや……あんま……人前に出たくないというか。やっぱりキキがやったほうが……」

「何言ってんだよ。ちょっと昔の失敗か?あたしだってお前が晒された動画、見たことあるぜ」

「知ってたんだ。まぁ、そりゃそうか」

拡散に拡散を重ねられ、ネットに繋げられる日本人ならおおよそ誰でも知っている動画。キキが知っているくらい、当たり前といえば当たり前だ。

「でもな。あのときのお前とはもう違う。あの時より断然カッコイイぜ、お前。ま、あたしに比べりゃまだまだだけど」

「いや……そうかな?」

「大丈夫。赤点だって、そんじょそこらの奴よりよっぽどヒーローだぜ!」

「結局赤点なのか……」

「おう、頑張れ赤点グリーン!」

「人をバングラデシュの国旗みたいに……」

「バングラデシュ?」

「なんでもない。やるよ。ヒーローショー。おかげで少し勇気が出た」

「おう、いいってことよ!人に勇気を与えるのもヒーローの役目だ!」

キキは親指を立てる。シオンもつられて親指を立てた。


 「とは言ったものの……」

シオンの自宅。朝食の鳥肉と野菜の炒めものをつつきながら彼はぼやく。

「あまりにも急だし、決行の時間が近づいてくると、緊張する……」

『大丈夫大丈夫、なんとかなるって。君はヒーローなんだから。いつもどおりのことを、ちょっとだけ普段よりカッコつけてやるだけさ。で、そろそろスマホの充電くらいしない?あれじゃただの金だけ消費する壊れやすい文鎮だよ』と、チェンジャーから声が聞こえる。

「充電コードが断線してて無いんだよ」

数日前やっと充電コードにスマホをつなげたまでは良かったが、うんともすんとも言わなかったのでスマホの電源についてシオンは完全に意気を削がれ、諦めていた。

『買いに行きなよ。コンビニにも売ってるだろうし。』

「いや……コンビニはちょっと……」

『今更何言ってんのさ。トラウマ克服のためにも行きなよ』

「この年になって変身アイテムに説教されるなんてな……」

『この年になってコンビニ行くのに躊躇してるほうが問題だよ。ほら』

このまま会話していてもいずれ言い負かされるだけだろう。そう判断したシオンは上着を着て、チェンジャーと財布をポケットに押し込みコンビニに向かった。


バングラデシュ:緑地に赤丸で、日本の色違いのような国旗。エビを多く輸出してるぞ。


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