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月極仮面

 「この 月極げっきょく仮面が来たからにはもう安心だ、赤点マン!」

「あー、はいはい、助かったよゲッキョク仮面。」

「君は怪人の所へ!私はこいつをなんとかしておく!とおっ!」

キキは突き出された杭をスニーカーの底で蹴り飛ばす。

「いや、生身じゃ危なすぎるって!」

「うるさい!生身相手に変身して戦うのはあたしの主義に反する!とっとと行け赤点!あたしはこいつより強い!」

素に戻った。キキの中で、 月極げっきょく仮面のキャラ設定がまだ固まっていないようだ。

「戻るまで無事でいろよな!」

「それまでには片付けてるよ!くっちゃべってる暇あったら早く行け!」

「ああ!」

再び視界に矢印が浮かぶ。シオンは戦闘を繰り広げる二人の横を通り抜け、走った。


 「はーっはっは、来たなヒーロー!今日がお前の……あれ?随分本格的だな、まあいい!今日がお前の命日だ!」

壁に向かって予行演習か何かをしていたクジャクのような怪人はたどり着いたシオンに指を指す。

「何いってんだお前?まぁ……あれだ。覚悟しろ。」

「ノリが悪いぞ!そんなんじゃオーディエンスは盛り上がらない!練習どおりにいくぞ、はあっ!」

腰の入っていない怪人の蹴りをシオンは内小手で払い除け、逆突きを返す。

「てえぃ!」

「ぐうっ……フルコンタクトはやめろって何回も……はあっ!」

怪人はシオンを翼で叩こうとする。シオンは屈んで避け、横蹴りを怪人の胴に叩きつける。

「そりゃあ!」

「ぐっ……まさか……本物!?ちょっと、ちょっとタンマ!」

「タンマもマンタもあるかぁ!おりゃあ!」

叩きつけるように踵落とし。怪人がうめく。

「ぐう……っ……なあ、このタイミングで来られると人こないだろ?昼過ぎくらいにまた来てくれたらちゃんと戦うから!」

「今がお前の命日だ!おらぁ!」

逆突き。怪人は吹っ飛ばされる。

「ぐっ……あーもう、無茶苦茶だ!おさらばさせてもらうぜ!」

「逃げるつもりか!」

「当たり前よ!」

怪人は羽を羽ばたかせる。が、風が少し起こっただけだった。

「嘘だろ!?飛べない!」

「そりゃお前鳥の怪人だからって飛べるわけじゃないって……」

「くそー……派手にしたいとは言ったが、ほんとに派手なだけか……」

怪人は長い首を項垂れる。

「今日はほんとに調子狂うやつばっかだな……とりあえずもう逃げられないぞ」

「それはどうかな!そぉい!痛ってえええ!おりゃあ!」

怪人は尾羽根を数本まとめて引き抜き、シオンには投げつけた。

が、羽はひらひらと舞って地面に落ちた。

「お前何がしたいんだ?」

「これもだめか……よし!こうなったら最後の手段!」

と、怪人は地面にひれ伏す。

「何卒ご容赦をー!」

命乞いである。

「はぁ?」

シオンは困惑した。敵意も戦意もこいつには無い。


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