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 「さて、この拳を誰かに振るうのはいつぶりかな……そうだ、前の君と戦ったときだったか。鈍ってないといいんだがね。」

フレイムボルトは、無造作に赤熱する拳を振るった。

──速い!

素の速度ではヴォルクに敵わないが、確かな技量を感じさせる突き。 シオンはなんとかかわし、拳は背後の電柱に当たった。

どろり。電柱が瞬時に赤熱し、溶けた。

「マジかよ……」

支えを失った電柱は繋がった電線を引きちぎり、地面に敷かれたアスファルトを溶かし地面に倒れる。幸いにも建物を巻き込むことはなかったが、シオンにはそこまで気を回す余裕はない。

「おや、やってしまった。近頃はこううっかりすることが多くていけない。」

平然と、燃え盛る怪人は言う。

「さぁ、仕切り直しといこうか。」

つかつかと、フレイムボルトはシオンに向かって歩く。シオンの背後には家屋の壁。

攻撃を食らえば、おそらく焼け死ぬ。

が、避けて建物に当たれば他の誰かが死ぬ。

──戦え。生き残るには、それしかない。

シオンは拳を握り締めた。やるべきことは、今のシオンが考えついた勝ち筋は一つ。

失敗すれば死ぬ。だがやらなければ、誰一人救えない。

「君を殺すつもりは今の所無いが、もし死んだらすまないね。辞世の句でも読むかい?」

シオンは構えを解き、突進する。

フレイムボルトは無防備なシオンに中段の突きを合わせようと──拳の数センチ手前、シオンは地面を蹴り、フレイムボルトの頭上を超え背後に回り込んだ。

「何っ!?」「ここだぁ!」

シオンは不意をつかれたフレイムボルトの背を蹴り飛ばす。

バランスを崩したフレイムボルトは咄嗟に地面に手を突くが、その拳は地面を溶かし、支えを失いくずおれる。

赤く溶けた地面は一気に広がる。立ち上がろうと踏みしめた足の下も溶けていく。なおも立ち上がるその背中をシオンは蹴り飛ばし、赤い液体となった土に足をついたフレイムボルトはじわじわと沈んでいく。

「なっ……!まさかこんな!こんなことが!」

赤熱を解いたとして、溶けた地面がすぐに戻るはずもない。フレイムボルトはもがくがその足が、胴が、そして胸が沈む。

「こんな……こんな屈辱的な!終わりを……」

シオンはただそれを眺めていた。

「俺がもっと強かったらさ、別の勝ち方があったかもしれない。あんたを助けられたかもしれない。でも今の俺にはそんな度量はないや。ごめん、こんなやり方でしかあんたを倒せなくて。」

「はははは……情けなど無用……無様とはいえ戦いの中で死ぬのなら本望よ……一足先に、地獄で待っているぞ……」

燃え盛る頭が溶けた地面の中に消えると、ボコボコと泡が表面に浮かぶ。やがて地面は冷え、円型に焼け爛れた地面と倒れた電柱だけが、フレイムボルトの存在した痕跡になった。


怪人名鑑#7 フレイムボルト


炎と熱を纏う幹部級の怪人。炎とは別に電気の力により熱を得ているらしい。 赤熱する拳の攻撃は強力だが、一度拳に熱を込めると変身解除か死ぬまで冷えることはない。

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