フレイムボルト
『フィニッシュムーブ!バニッシュインパクト!』
チェンジャーから音が流れ、拳に光が集まる。
「うおおおおぉおお!!──ぐっ!?」
拳を突き出そうとした瞬間、背後から衝撃を受けシオンは地面に転がる。
「増援か……!」
振り向いた眼前に立つのは、燃え盛る炎を纏う長い手足の怪人。
「やぁ、ヒーロー君。ご無沙汰してるね。背後からの奇襲ってのはこうやるんだよ」
背後では狼の怪人がふらつきながらもなんとか起き上がる。
──2対1か。まずいな……
シオンは背中に冷たいものが伝うのを感じた。
「ああ、安心したまえ。私は君を倒しに来たんじゃない。足止めをしにきただけなんだ。」
炎の怪人が手を顎……斜めに目のような紋様がいくつも刻まれた仮面の下に当て、言う。
「さっさと逃げ給え、スィニーヴォルク。」
「感謝しますよ……フレイムボルトさん……ぐっ……」
スィニーヴォルクと呼ばれた狼の怪人は、よろめきながら逃走する。
「待て!」「おっと、通さないよ。少し遊んであげようじゃないか。」
フレイムボルトの両手に炎が生まれ、ごうごうと燃え盛る。
「イモムシぃ!次は……殺してやる!!」
怒りに燃えた声が、遠くなっていく。
「くそ……!」
また逃げられた。シオンは歯軋りする。
「さて、水入らずになったところで。ヒーロー君、炎はいかがかね?」
フレイムボルトは両手を振りかぶり、炎を投げつける。シオンはガードすることもなくフレイムボルトに突進した。炎がスーツに燃え移り、広がる。
「はあっ!」
炎を全身にまとわりつかせながら、シオンはフレイムボルトに横蹴りを放つ。
「なるほど、無謀さだけはヒーロー然としている。だが甘い!」蹴った足が、フレイムボルトに蹴り上げられる。
「くっ!」
シオンは後方に跳躍し、地面に転がって全身の火を消した。
「なかなか面白い戦い方をする。ヴォルクの道草が長くなるわけだ。」
フレイムボルトが炎を纏う両手を握り締め、その拳が赤熱する。「私も、少し本気を出してもいいかね?」