湿布
翌朝。シオンは全身の激しい痛みで目を覚ました。
「痛い……めちゃくちゃに痛い……」
昨日の訓練の筋肉痛で朝から満身創痍だ。
「足……上がるといいとか言ってたっけ……」
開脚し、足の筋を伸ばす。昨日の無理なストレッチのせいか痛みはあるが、それでもかなりの角度まで広がるようになっていた。
「荒療治のちからってすげー……」
普段なら朝食を済ませたら歯を磨いてジョギングに行くところだが、このボロボロの体では躊躇せざるをえない。
──いや、でもここで普段以上に頑張ったらヒーローっぽい気もする。
とシオンはシャワーで軽く汗を洗い流すと、着換えていつもどおりジョギングのため家を出た。
「おー、痛ってててて……」
川沿い。限界を迎えた体はジョギング程度の運動でも容易に悲鳴を上げる。
「おっ、赤点。おはよ。今日も元気だなー。頑張れよー」
いつの間にかいたキキが、シオンに声をかけ、追い抜いていった。
「ははは……」
あんだけ動いて筋肉痛の一つも無いのか。それに比べて俺は。
シオンは数ヶ月前までの運動不足を祟った。
帰宅後、再びシャワーを浴びてバイトの時間にアラームを合わせて寝る。限界だった。
数時間後、アラームの音で目覚める。全身の痛みは多少マシになったように感じた。
ふと思い立って湿布を探したが無い。去年くらいに買った湿布は、多分使わなさすぎて捨てたのだろう。
買いに行くにも時間があまりない。寝すぎた。
湿布は明日にでも買いに行けばいいやとシオンは工場へ向かった。
いつもどおりの仕事が終わり自室のドアを開けると、新聞受けの中で何かがカラカラと音を立てた。
新聞をとっていないので何かが入っているのは非常に稀だ。
開けてみると、湿布の入ったビニール袋が詰め込まれていた。
[赤点、ファイトな!]と端正な時で書かれたメモ書きも。
キキが買ってきてくれたのだろう。
にしても……シオンはメモの時を見る。
あの性格でこんなきれいな字ってすげーな……と。