サテライト・メガ
イドスの群れはわらわらと湧き出し、津波のように迫る。シオンたちが撃退する勢いよりも、ごくわずかに早く。その僅かな差は1秒ごとに積み上がり──じわりじわりと、シオンたちは背後の船の方へと押されていく。
「まずいまずいまずいまずい!なんかないのか、なんか!」
ジュピターの黄金の輝きは、疲労のせいか少しずつ鈍くなっている。
「あるさ、とびっきりのが!でも、まだ完成度は六割とちょっと!大気圏突入で損壊することを考慮に入れると稼働時間は……」
「完成度?そんなこと言ってられる場合じゃない!このままじゃそれが日の目を見る前に仲良くエイリアンの胃の中だ!」
「わかってるよ、今大気圏への突入角度の調整中!」
「なるべく早くで頼むぞ!このままじゃ持たない!」
ジュピターの黄金の輝きが点滅し、やがてふっと消える。山のように積み重なったイドスの群れが宇宙船へと迫り──轟音と共に吹っ飛んだ。
「なんだぁ!?」
「来た……サテライト・メガ!」
大地に潰れたイドスと共に巨大なクレーターを作り出したのは、白銀に輝く直径2メートルほどの球体だった。
「フォーメーション・ファースト!」
ギシギシギシギシ、と軋みながら球体が変形する。サテライトは関節から火花を散らしふらつきながらも、球体へと走る。球体は変形しながらサテライトを飲み込み──さらに変形したその姿は、輝く剣と盾を携えた、5メートルほどの白銀の巨人。
「完成!サテライト・オメガ!うおおおおおっ!」
白銀の巨人、サテライト・オメガは剣を振るい、盾で叩き潰す。その一撃ごとに、十数のイドスが肉塊となり、動かなくなっていった。押し寄せるイドスの波が、少しずつ後退していく。
「いける!これなら!」
「いや……時間稼ぎだ!思ったより大気圏突入の損傷が激しい!稼動限界、残り150秒!」
「十分だ!」
ジュピターの拳が光り輝き、イドスの頭蓋を砕く。黄金の輝きは失われたが、未だその内なる闘志と、攻撃力は十分であった。




