不殺
「我は──おそらくだが、貴様らを殺したくないと思っているようだ……」
レドクスは立ち上がる。ふらつく足が地面を踏みしめ、ミシミシと音を立てアスファルトにヒビを刻む。
「だから……そうだな、お前たちをどかすが……死ぬなよ」
「ふざけたことを!とっととくたばれ──ぐうっ
?」
投げつけられたタライをレドクスは受け止め、その場で回転するとタイラタインに投げ返し、その顎にクリーンヒットさせた。
糸の切れた操り人形のように、タイラタインは倒れる。変身が解除され、人間の姿に戻るが外傷はない。脳震盪を起こしただけのようだ。
レドクスはちらりと確認し、オクターに向き直った。
「良くもタイラタインを!許さな──うわぁ!」
殴りかかるオクターの体がふわりと浮き、地面に叩きつけられる。地面にヒビが入り、オクターの変身も解除される。
「こんな……俺たちが、こんな簡単に……」
「案ずるな。お前たちは強く、誇り高かった。また相まみえる時は、お互いなんの気負いも無く戦えることを願おう」
「こんな……バカが……」
ミナトは意識を失った。レドクスはその腕をとり、脈を測る。目立った外傷は無く、呼吸も脈拍も安定している。
──問題なさそうだな。これでいい。
レドクスは頷き、ヴィーチェたちの捜索を再開した。