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予感
「いやー、今日も大盛況だったねえ!ヒーローショーのおかげですっかり町おこしも成功して、順風満帆ってとこだねぇ。さ、どうぞ」
蕎麦屋の店内。大取は嬉しそうに言うと、テーブルの上にカレーうどんを置く。時間は8時半。店じまいのあとのシオンへの賄いだ。
「いただきます」
シオンは手を合わせ、カレーうどんに箸を伸ばし──突如、地響きとともに地面が揺れる。カレーうどんははね飛び、シオンの上半身の全面にまんべんなく振りかかった。
「熱っつぁ!!!」
カレー色に染まったシオンは仰け反り──地響きも止まった。
「大丈夫かい?」
「ああ、なんとか……」
「奥にシャワーあるから。浴びてきなよ。着替えとか用意しとくよ」
「助かる……」
カレー色に染まったシオンは店の奥へ入っていった。
「地震かな?津波とか起きないといいけど……」
大取はテレビをつけたが、放送されていたのは
いつもどおりのクイズ番組やバラエティだった。
数分待ったが、画面が切り替わることもない。
「嫌な予感がするなぁ……」
大取は眉をひそめながらテレビを消した。