ストレス
残業が長引いた。無駄な会議に時間を使いすぎたせいで。キキは真っ暗になった街灯もない帰り道で悪態をついた。
「あーあ、やってらんねぇ。頭の硬い爺共め。」
曲がりなりにも47代目社長に就任した彼女に、役員の老人たちはいつもけしていい顔をしない。
やることなすことに文句をつけ、それでもなんやかんや強行した見積もりはいつもうまく行く。それでも彼らは常に首を横に振るのだ。時間をドブに捨てながら。
大好きなバイクも禁止。車の距離でもないため帰り道は歩きだ。非常にストレスがたまる。
「はぁ……ん?」
肩を落として歩く彼女は背後に殺気を感じた。
「おっ。ちょうどいいとこに来たなお前。ちょうどストレス溜まってんだ。八つ当たりなんてヒーローとしてはちょっとダサいけど……殴らせろよ、化け物さんよ!」
背後に忍び寄る猪の化け物──イドスの一匹に、キキはビップに変身すると同時に銃撃を放った。
百足の甲殻は銃弾を弾き、猛毒の牙がビップに迫る──
「その手はもう食わないよ、二度とね!」
ビップは牙を手刀で両断、その勢いのままイドスに回し蹴りを放つ。百足の甲殻が割れ、オレンジの体液が滲むが、すぐに再生する。
「なるほどね、殴りがいがある!」
ビップは絶え間ない突きでイドスの甲殻を割る。再生──割る。再生──割る。割る。割る。
「よし、スッキリした!これでそろそろ終わりにするか!」
数百発を殴り続けた彼女は満足げに居うと、ひしゃげた甲殻から体液を流すイドスを空中に蹴り上げる。
「行くぜ新必殺!」
『フィニッシュムーブ!ギガントレーザー!』
ビップの両腕の装甲が変形し、巨大な銃口となる。
そして天を貫くような極太の光線が落下するイドスを包み──跡形もなく消滅させた。
「よし、明日もがんばるか。ありがとな化け物!」
変身を解除したキキは足取りも軽く再び帰り道を歩きはじめた。