川沿いで
「まさか、俺をからかいに来たのか?」
呼びかけられた相手が自分を無資格呼ばわりした相手だと知って機嫌を悪くしたシオンは差し出された貴星の手を払い除けた。
「何自惚れてんだよ。お前に何があったかあたしの知った事じゃないし、そーいうふうに自意識過剰だから無資格無資格言われんだぞお前。」
「はぁ……無資格かぁ。」
その言葉に落ち込みが復活し、シオンはまたうなだれる。
「そういううじうじしたとこも!『俺はヒーローなんだからお前にどうこう言われる筋合いは無い!』くらい言えるメンタルの強さっての?くらいないと務まんないよ、こういうのはさ。」
「そうだよな……俺にヒーローなんて務まるはずもなかったんだ……所詮俺は糞もらしのままだ」
「あーもう、めんっどくさい!もう帰んなよ。無理しすぎると良くない。あんた今にも死にそうな顔してるよ。」
何を言っても無限に落ち込み続けるシオンに、キキの堪忍袋の緒が切れた。
「ごめん……帰るよ」
「おう帰った帰った。まだ寒いから暖かくして寝ろよー」
うつむきながらとぼとぼと去っていく背中に貴星は手を振った。
「はぁ……手がかかるなぁ。あたしが失格とか言ったせいもあんのかな。ここは先輩らしく、元気づけてやらなきゃね」
と、彼女は豆粒のように小さくなったシオンの背中を眺めながら呟いた。
その夜、仕事から帰ってきたばかりのシオンの部屋にキキが訪ねてきた。
「無資格、ちょっとツラ貸せよ。」
あっけに取られるシオンに、彼女は笑いかけた。
「な、なんで俺の家を?」
「そりゃ用事あるからに決まってんじゃん。」
「いや、そうじゃなく!なんで知ってるんだ?」
「そりゃあ、こないだ見たからね。さ、行こう。」
強引にシオンの手を引き、キキはシオンを玄関から引っ張り出した。