手加減
「一週間くらいは起き上がれなくなると思うけど……恨まないでね」
プラーガの瞳と拳が怪しく輝く。
その正拳突きを払いのけたロムルスは、横蹴りをプラーガの胴に叩き込む。
「がっ……ぐう……だがこちらに触れた時点で……」
「うるせええええっ!」
ロムルスは踏み込み、追撃の拳が隻眼の頭部に直撃する。
「なっ……なぜ倒れない!ウィルスは確かに……」
「そんなもん効かねぇよ!」
回し蹴りがプラーガの肩装甲を砕く。
「まさか……炎の熱で……!」
破れかぶれの正拳突きを蹴りあげられ、プラーガは体勢を崩す。
「もうちょい早く気づくべきだったな!オラァ!」
がら空きになった腹に、ロムルスは強烈な正拳突きを放つ。
プラーガは声もなくうずくまり、その変身が解けた。
「嘘だろ……ヒーローがここまで強いなんて……」
「あ?違うぜ。俺はヒーローじゃない。ただの喧嘩っ早い怪人崩れだ。ほんとのヒーローはこんなもんじゃないぜ?」
「よくわかんないけど……あー、なんかもういいや。好きにしなよ。殺すでもなんでも」
「そんなことするほど落ちぶれてねえよ。こっちの気は済んだから帰るぜ。お前も気をつけて帰んな。」
変身を解いた蒼は手を振り、去っていった。
「何なんだよ、あいつ……馬鹿にも程があるだろ……」
プラーガの変身者──得嗣はぼやく。ダメージは少なくないが、臓器や骨に損傷はなさそうだ。
おそらく手加減されたのだろう。それだけの力の差があった。スペックで言えばこちらのほうが上のはずなのに。
「馬鹿だけど……悪いやつじゃなかったなぁ。」
得嗣は空を見上げた。星がいつもより綺麗に見えた。




