八つ当たり
「はぁ、これで36体……あと何体いるんだろうなぁ。また増えてたりしそうだからイタチごっこだよなあこれ……」
オレンジ色の水たまりの前で、プラーガは溜息をつく。使命とはいえ、終わりの見えない戦いを続けるのはけして楽とはいえない。
「本当に余計な奴が来たよなぁ……ヒーローたちは頼りないしさ、担い手も変身できる奴はまだそんなにいないしさ……リーダーなんてガラじゃないのにさ……」
ブツブツとぼやきながらあるき去ろうとする彼を、誰かが呼び止めた。
「やーっと見つけたぞ。まさか怪人の嗅覚がこんなとこで役に立つとは思わなかったが……この辺じゃ見ない奴だな、お前」
プラーガが振り向いた先にいたのは、青の毛皮を持つ狼の怪人。
「怪人……?まさか、僕と戦う気かい?それとも手伝いに来てくれたのかい?」
「ああ、単にテメーが気に食わねえから殴りに来ただけだよ。俺の友達に血反吐吐かせて詫びの一つもないテメーにな!」
「たまたま彼の体質に僕が合わなかっただけだよ。」
「どうでもいい。最悪に腹立つから血反吐出すまで殴らせろって言ってんだよ。」
「……いいよ。できるもんならね。お役御免のヒーロー気取りたちに見せてあげよう、圧倒的な力の差を!」
プラーガの隻眼が怪しく輝く。
「変身!」
狼の怪人──ヴォルクはチェンジャーを装着し、紺の戦士、ロムルスに変身する。
「見せてやるよ、圧倒的な八つ当たりを!」
チェンジャーにギアを装填したロムルスの装甲は真紅に染まり、炎を纏った。