狩り
「ふう……撒いたか。まったく、どこまでも面倒な奴等だ、人間というのは……」
地中を彫り進み逃走したイドスは、先程いた山とはいくらか離れた別の山に移動していた。
「とにかく……大規模なことをすると、奴らに気取られる。堅実にいくしかあるまいな。」
イドスは再びいくつかのクローンに別れ、既にあちこちに分散している。一人や二人倒されたところで大した痛手ではあるまい。
「見ていろ……絶対に、地上を……」
呟いたイドスの脳裏に、いったいなんのために?という疑問が浮かんだ。
──いや、なんのためなど考えてはいけない。これは、やるべきことなのだ。我らの種族のために……
イドスは拳を握りしめた。それが彼の最後の動作だった。
「はあ……まず一匹。ほんと面倒なことになったよなぁ」
その声が聞こえると同時にイドスの意識は途絶え、その体は水風船のように爆ぜた。
その背後、プラーガの目が夜の闇に妖しく輝いた。
「どうせまだいるんだろ。君らがいなくなるまで狩りは終わらないよ、異星からの侵略者共……」
夜の闇はプラーガを覆い隠し、あとにはオレンジ色の死んだ水たまりと静寂だけが微かな月明かりに照らされていた。