風邪
「なぜあそこにあんなものが……?」
まだ少し熱っぽい額に手を当てながら、シオンは呟く。
『シオンにとっては危険だから除染と、ヴォイドに対する特効薬になるかもしれないから一応サンプルを……体の方はもう大丈夫だと思うけど一応風邪薬でも買う?』
チェンジャーからはさてらいとの声。何か良からぬことが起きている割には、のんびりとしている。
「いや……風邪薬か……なんかテンション下がるな……」
『あと、あんまし必要ないと思う。大事なのは休養だね。ゆっくり寝なよ。幸い今日はお休みなんだから』
「んー、確かにそうだけどさ……気になるんだ。あそこで何があったか……少なくとも、ヴォイド絡みのなにか……」
『僕らが調べておくから。寝なよ』
「ああ……ありがとう。なんかあったら起こしてな。」
『僕は目覚ましじゃ……まあいいか。何かあったら頼むよ。』
「ああ。」
シオンは布団を敷き、寝転ぶとすぐに眠気はやってきた。
夢の中、誰かに語りかけられた。地球に迫る侵略者を追い払え、と。
──今やってるからちょっと待ってろ。
シオンはそう返したが、答えはなかった。
目が覚めると、熱はひいていた。
新聞受けに風邪薬が放り込まれていた。さてらいとの余計なお世話だろう。
シオンは箱を開けもせずそれを冷蔵庫にしまった。