感染
「ハッタリを──この圧倒的戦力差、覆せるはずがあるまい!」
増殖したイドスのうち3匹が、プラーガに遅いかかり──水風船のように爆ぜる。
「感染症──君たちはかかったことがないのかい?それに、戦力差?クローンは僕に対して戦力じゃない。免疫が同一なら──感染症はただの確実な死だ」
プラーガは手を振り払う──一瞬のうちに、十体以上のイドスが爆ぜ、地面を濡らす。
「進化はまだかい?そろそろ飽きてきたよ」
爆ぜたイドスの撒き散らした液体に触れた別のイドスたちがもだえ苦しみ、爆ぜる──ドミノ倒しのように、誘爆する機雷のように、イドスたちは数を減らしていく。
「くっ……これなら……!」
破れかぶれに最後の数匹になったイドスの一匹は地を這う虫を捕まえ、捕食した。
「はぁ……はぁ……」
──爆ぜない。生きている。酷く気分は悪いが。
「ああ、免疫がある生き物を食べて進化したか。運がいいね。」
虫を喰らい生き延びたイドス以外の彼のクローンはすべて異臭を放つ水たまりとなり、唯一生き残った彼はプラーガに背を向ける。
「ここは、一時撤退を──」
「させないよ。」
プラーガの手が怪しく輝く──地面を蹴り飛びかかり、振り放つその手がイドスを捉える直前──イドスは異臭を放つ水たまりに足を取られて転倒し、川に落下した。
流れの早い川に、イドスは流される。下流へ、下流へと。
「あーあ、逃げられたか。 まあいいや。あれならいつでも狩れる。それに僕だけじゃないからね、文明の担い手は……」
濁った川の流れを一瞥すると、プラーガは変身を解除し、夜の街に消えていった。