201/245
単為生殖
河川敷、高架下。雨風と人目を凌げそうなその場所を、イドスはしばらくの間拠点にすることにした。
「さて──これからどうすべきか……」
コンクリで補強された川沿いに身をもたれさせ、イドスは思案に暮れた。
人間を滅ぼすには一人では心許なく、たとえそれをしたとしても……ワーカーのイドスがロードたちの取り分を奪い、生きながらえていてはヴォイドはそのまま滅びる。
「なれば──」
数を増やす。まずは単為生殖を行う生物を取り込み、自らを増殖させよう。
彼は地面に膝をつくと淀んだ川の流れに手を突っ込み、感覚を研ぎ澄ます。
──いた。
彼の手は水中のミジンコを捕らえ──取り込んだ。
「ふふふ……いいぞ──いいぞ!」
イドスは立ち上がる──その目は一つになり頭部には一本の角。体は微かに透き通り──ミジンコの怪人とでもいうべき姿へと変容していた。
「生めよ、増えよ……地に満ちよ!」
その指先から、風船が膨らむように新たなイドスが生み出される。それが何度か繰り返され──彼は十数人に増殖した。