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単為生殖

 河川敷、高架下。雨風と人目を凌げそうなその場所を、イドスはしばらくの間拠点にすることにした。

「さて──これからどうすべきか……」

コンクリで補強された川沿いに身をもたれさせ、イドスは思案に暮れた。

人間を滅ぼすには一人では心許なく、たとえそれをしたとしても……ワーカーのイドスがロードたちの取り分を奪い、生きながらえていてはヴォイドはそのまま滅びる。

「なれば──」

数を増やす。まずは単為生殖を行う生物を取り込み、自らを増殖させよう。

彼は地面に膝をつくと淀んだ川の流れに手を突っ込み、感覚を研ぎ澄ます。

──いた。

彼の手は水中のミジンコを捕らえ──取り込んだ。

「ふふふ……いいぞ──いいぞ!」

イドスは立ち上がる──その目は一つになり頭部には一本の角。体は微かに透き通り──ミジンコの怪人とでもいうべき姿へと変容していた。

「生めよ、増えよ……地に満ちよ!」

その指先から、風船が膨らむように新たなイドスが生み出される。それが何度か繰り返され──彼は十数人に増殖した。



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