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追放
イドスは手を変じさせた剣を振り抜く──その切っ先は空を切る。キュステアの姿は、彼の視界から消えた。
「なっ……?」
「ごめんね。私がいるから、あなたたちが苦しんでるんだよね」
背後からキュステアの声。
──回り込まれた?
「私を殺そうとした君を、放っておくことはできないけど──選ばせてあげるね。君がどうするか……」
イドスは自分の視界がぐるりと回転するのを感じた──腕を掴まれ、合気道のように投げられ、キュステアを切るために変じた剣は、彼女によって群体船の床を切り裂く。
「まさか、あり得ない……!」
真空の宇宙空間からの強烈な陰圧は、イドスを吸い込み、その勢いのまま地球へと射出させた。
「ばいばい、おじさん。もし次に会ったとき友達になれそうだったら──そのときは一緒に帰ろうね」
真空になった廊下。劇的な気圧の変化に眉一つ動かさず、キュステアはイドスに手を振った。