意地
「一人が二人になったところで、結果は変わらない!二人まとめて炭にしてあげよう!」
キュクロプスの放った雷は、ジュピターに全て吸い込まれ、消えた。
「何っ!?」
予想もしない出来事に虚をつかれ反応が遅れたキュクロプスに、シオンと蒼の拳が直撃する。
「がっ……何故……!?」
「さあな。とりあえずお前は終わりだ」
と、シオンは拳を握り締める。その拳面に、微かに稲光が走った。
「そうか、吸収か……ならば……!」
キュクロプスは空に手をかざす。
「呼び戻さなくては……炎を!」
アニバース基地の中から灰が流れ出し、その掌に集まり──燃える炎のような色のギアとなった。
「これなら……!」
キュクロプスは炎のように輝くギアを装填する。
『プロミネンス・スタイル!』
爆ぜる炎を思わせるような音楽と共に、キュクロプスの全身が火に包まれる。
「もう……吸収はできないだろう!」
「それで?終わりなら……こっちから行くぞ。」
ジュピターは踏み込み──その姿が消え、同時にキュクロプスは空中に打ち上げられていた。
「何……だと!」
反応する間もなかった。背中の痛みが、残心を取るジュピターの体勢が蹴りによって自分を打ち上げたことを知らせる──だがそれを知ったところで──
「俺からも、喰らえっ!」
巨大な水の球が、キュクロプスの体表の炎の一部を消し去る。質量と速度によるダメージに、彼はうめく。
「くつ……これは……」
──逃げるべきだ。本能が、理性が雷斗に警告している。が、しかし。
「人類の進化のため……ここでまた逃げる訳には……!これが最初で最後のチャンス……!」
キュクロプスがチェンジャーのボタンを押すと、隠しギアスロットが側面から飛び出す。
「こうするしか……今は!」
彼はギアを3つ取り出し、装填する。
禍々しいそれは、チェンジャーの中で回る、回る、回る。
『『『アンプリフェクション……!』』』
重なった3つの声は、地獄の底の亡者のようだった。