手癖
ロムルスは踵落としの反動で再び空中に上がり、着地──その瞬間、蹴りが水音とともにロムルスの胸部を通過した。
「効かねえよ!脳までヒビ行ったみたいだなぁ!」
「─────」
狂戦士は蹴り足を地面につけると同時に荒々しい突きを放ち──水音。
「効かねえって──」
同時に煤けた足が、地面を踏み鳴らす。
地震のような振動が、液状になったロムルスの全身を強烈に揺さぶった。
「なっ──?」
振動が、波打った全身にダメージを刻む。致命傷にはなりえないが、無視できないほどのり
──視界が……揺れている。振動は収まっているはずだ。脳震盪か……まずい、いったん距離を……
ロムルスの足がもつれ、転ぶ。
「──────────!」
立ち上がれず地面に倒れ込んだロムルスに、狂戦士は執拗に拳の乱打を浴びせた。
突き抜けた振動は増幅され──その肉体にダメージが蓄積されていく。
「まずいな──これじゃ──」
と、拳の雨が止む。ロムルスはよろけながらも起き上がった。目と鼻の先には背中から地面にうちつけられたらしい狂戦士。
それを体当たりで吹き飛ばしたのは──鎌鼬のような戦士、キュウキだった。
「もう、大丈夫なのか?」
心配そうに尋ねるロムルスに、キュウキは頷く。
「お前よりはな。俺は──今、やるべきことを──いや、やらなきゃいけないことだ。それをやるだけだ。例え裏切り者のクソ野郎でも……」
「いいのか?その姿じゃ──」
「いいんだ。」
「そうか。なら、俺も覚悟決めるか!」
ロムルスはギアを取り出す。禍々しい紋様が刻まれた──
「それは……!」
「手癖が悪いんでな。もらっとくぜ。あんたは後ろで見ててくれ。もし駄目なら……その時は……」
言い放つと紺の戦士はフォームチェンジギアを外し、躊躇わず禍々しいギア──アンプリフェクション・ギアを装填した。