タオル
その日、疲れも取れないままなんとか終わらせたバイト帰り。
ポケットに入れていたチェンジャーから『なんかいるよ。気をつけてね。』と声が聞こえた。
「怪人か?」
『Gue-A粒子濃度が高いよ。怪人だね。』
「みたいだな。もっと早く言ってくれ。」
シオンの帰り道に立ちふさがるのは、塗れたタオルを絞ったような見た目の怪人。何だあれ。
「あのさぁ、俺、金がさ、ないんだよね、金、くれない?」
タオルのような怪人が喋る。
レストランに格付けして金を稼いでそうな見た目だが、そんなに困っているのだろうか。
路上強盗、考えてみれば怪人がやることとして合理的だ。
人間ではまず怪人に勝てない上、変身していれば顔も見られることはない。
怯えて金を渡す奴もいるだろう。そうすれば手間もかからない。実に合理的だ。
一つ問題点を上げるとするなら……
『マスクドオン!ジュピター!』
シオンがそれと戦うのに慣れてきているということだ。
「てやぁ!」
「ひ、ヒーロー?ぐぼぉっ!」
シオンの正拳突きが、狼狽える怪人の腹に突き刺さる。
二発、三発、四発。
反撃も許さぬような鋭い拳は、的確に怪人にダメージを与えていく。
「ん?なんか調子いいぞ!」
「て、てめえ…!」
怪人が怒りにブルブルと震え、その全身から細い糸が吹き出る。
油断していたシオンは予想外の攻撃に絡め取られてしまった。
「うわ!」
絡まる糸は思いの外頑丈で、引きちぎろうともがくシオンの身動きをぎりぎりと封じていく。
その上に更に糸が絡まりつづけ、やがてシオンを芯にした糸の芋虫が出来上がった。
「もががー!」
「ざまあねえな!」
怪人が勝ち誇る。