狂戦士
──これで終わりか……情けない……シオンの敵も取れず、戯言に惑わされ──出来損ないの機械人形にはお似合いの──最後だ
さてらいとの心に、諦めが浮かぶ。
ジェニュインボルトの放つ滝のような雷の柱が引き伸ばされた時間の中、ゆっくりと迫ってくる。しかしそれをかわす余力も、ましてや能力もない。
引き伸ばされた時間──だが、終わりのときが訪れることはなかった。
「……?」
雷よりも早く、さてらいとの頭上に飛び込んだ黒い影が、光弾を放ち雷を打ち消す。
爆発──さてらいとは後ろに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ぐう……っ!でも──生きてる……?あれは……」
さてらいとに背を向けた真っ黒な姿。
獣の様に地に手を付け、その喉から言語化できないであろう声を垂れ流す、その姿にさてらいとはどこか見覚えがあった。
「──まさか……シオン?」
その声に、獣のようになった漆黒の、ヒーロー──だったものは応えない。
黒くひび割れた装甲のヒビが、黄金の輝きを放ち始める。
「──────────────!!」
目のようにも見えるヒビの入ったバイザーから黄金の光の軌跡が尾を引き──漆黒の狂戦士は咆哮する。
そして同時に──いや、知覚できぬほどの次の瞬間──狂戦士はジェニュインボルトの背後に居た。
「なっ……?」
気配に振り向く間もなかった──乱雑に振り下ろされた黒い腕に、ジェニュインボルトの背がざっくりと裂ける。
ぼたぼたと血が流れた。骨のようなその背中には、深く刻まれた4つの傷口。
狂戦士の腕の装甲は変形し、巨大な爪の生えたそれになっていた。
「ほう──興味深い……ね……研究の素材には───ぴったりだ……!」
よろめきながら、ジェニュインボルトはチェンジャーを取り出した。禍々しいヒビの入る、銀色の変身装置を。