回想
──俺は……身を削ってシオンを助けて……
ぼんやりとした意識の中、トオルは思い返していた。新たなヒーローとなったシオンにあとを託し、その後の、ヒーローでなくなった自分の物語を。
病院のベッドで目を覚ましたトオルに医師が言ったのは、あちこちの骨が修復不能な程に砕け、完全にもとに戻ることはないであろうこと、そして日常生活を送るにも長期間のリハビリが必要ということだった。
リハビリに耐え、地獄のような痛みも、手術にも耐え──ヒーローとして弱きを助けた報酬にしてはあまりにも残酷で無慈悲な運命に、抗い続けて──
そんな生活が続いていくと思った矢先、彼は突然訪ねてきた。このような体に追い込んだ張本人である、フレイムボルトが。
「すまないね、どうやらやりすぎてしまったようだ。良ければ君に怪人細胞を融通しよう。その程度なら2日もすれば元通りさ。」と。
最初、トオルはそれを断った。だが、心の奥の暗い感情が、それを受け入れさせた。
──自分を犠牲にしてまでヒーローを全うした俺を気にもとめず、あいつらはのうのうとヒーローをしている──と。
フレイムボルトから聞いていた。新しくヒーローになったシオンの不甲斐ない活躍と、普段の仕事優先のキキのやる気のなさを。
──俺がこうなっていて、あいつらがヒーローごっこをしているなら──
──釣り合いを取ってやろう。俺は──
そうして彼は、怪人になった。
ただ、許せなかった。ヒーローごっこでいい気になっているシオンが、キキが──
──いや、違う。
本当は──