青狼
蒼は灰色の戦士に動じた様子もなく、それどころか変身を解除し怪人の姿──スィニーヴォルクに戻った。
「どういうつもりだ?」
怪訝そうにキュウキが聞く。
「どうもこうもねえさ。教えてやるよ。今のお前じゃ、三下の怪人一匹倒せねえってことをな!」
「ふん……嘗めた真似をする。後悔する間もなく切り刻んでやる!」
キュウキは踏み込み──その姿が消える。
同時に突風が吹き荒れ、ヴォルクの周りを風が覆い尽くす。
「目くらましのつもりか?」
ヴォルクは背後の殺気──キュウキの鎌を背中越しに受け止め、前方に投げ飛ばす。
「ぐうっ……」
壁に叩きつけられ、トオルはうめく。
「三下相手にこすい技使ってんじゃねえよ。戦い方まで地に落ちたか?」
挑発するようにヴォルクは吐き捨てる。
「くそ……嘗めた野郎め!」
立ち上がったキュウキは踏み込み、その姿がまた消える。同時に突風が──ヴォルクは跳躍した。
「そこだぁっ!」
空中、強烈な獣脚の蹴りがキュウキの喉元に突き刺さる。
「ゲホッ……なんで……こんな……」
「こんなんにすら勝てねえんだよ!ご立派な志無くした、元ヒーローなんてやつは!」
ヴォルクは返す脚で踵落とし、キュウキは地面に落下し、受け身も取れず地面に落下した。
「うぅ……ありえない、こんなこと……」
「現実だぜ、元ヒーロー。今なら見なかったことにしてやれるからよ。帰ろうぜ。お前のことよく知らないけどさ、お前がいなくなったらシオンたち悲しむんだろ?」
ヴォルクが差し出した手を、キュウキは払いのける。
「そんな……そんな生ぬるい考え方のお前に!この俺が!」
激高したキュウキが取り出したのは、二重螺旋が描かれた禍々しい色合いのギア。
「……待て!そのギア、危険な匂いが……」
蒼の忠告など届くはずもない。ギアはチェンジャーにセットされ、不気味な音声を響かせた。
『アンプリフェクション……』と。