カマイタチ
「ここは行き止まりか。戻って他の組と合流したほうがいいだろう。」
トオルは振り向くと、蒼に言った。
「君はキキたちのところへ。俺はサテライトとシオンのところに行くよ。さ、戻ろう。……どうした?」
トオルは首を傾げる。蒼は何も言わず、佇んでいた。
「どうしたんだ?早く戻らないと、他の……」
「いや、いいんだ。言いたいことがある。お前に」
ようやく口を開いた蒼の言葉に、トオルの肩が少しこわばる。
「話はあとだ。早く……」
「いや、今だ。俺は知っている。お前だろ、あいつらに情報流したの」
トオルはうろたえ、そして言う。
「そ、そんなこと、俺がするはずが……」
「クローン怪人の待ち伏せの時、お前だけ動揺していなかった。クローン怪人の生産装置を壊すときもなんの躊躇もなかったな。普通ならあんな得体のしれない装置、ちょっとはビビるぜ?」
「ははは、その程度の……」
「だけじゃない。お前、怪人の匂いがすんだよ。一回や二回じゃない。毎日のように怪人になってるやつの匂いがな。」
「はぁ……」
トオルの目つきが変わる。正義に燃えた眼差しから、卑屈な裏切り者の目に。
「言い逃れし続けるのも面倒だ……君は敵の戦闘員に殺された、そういうことにしておいたほうがよさそうだ」
トオルは変身を解除し人間の姿に戻ると、ポケットからギアを取り出し握りしめた。
その輪郭が溶け、カマイタチのような怪人へと姿を変える。
「変身……!」
『The faceless soldier……キュウキ!』
風が吹き付ける。旋風が怪人の周囲に寄り集まり、その姿を隠し──次の瞬間にそこにいたのは、両腕に鎌をそなえた灰色の戦士だった。




