輝きを新たに
「ここですよ……まずは景気づけに一発……」
倉庫の最奥、ネガジュピター……夜雲はどこからか掌大の半球を取り出し、壁にくっつける。
夜雲が壁から離れると同時にポップコーンの弾けるようなポン、とあっけない音が響く。
数秒後、半球はぽろりとドアから外れ、地面に落ちた。壁に残ったのは半球より一回り小さい穴が一つ。
「さて、と……」
夜雲は再びどこからか、掌大の球体を取り出す。
「あとはこれで内側から鍵を……」
と、突然背後の扉──倉庫の扉が閉まる。
「なんだ?」
嫌な予感がしたシオンは扉を開けようとするが、開かない。
「どういうことだ?」
目の前の壁──隠し扉が開いていく。 中からなだれ込むように現れたのは、何十体もの怪人。
両手がドリルの猿のような怪人、かつて戦ったのとそっくりな猪、ワニ、鼠の怪人──そのどれの目にも知性の光は感じられない。
「ふむ、クローン怪人ですか、悪趣味な……この規模は待ち伏せでしょうか?どうやら情報が漏れていたようですね。目的が果たせるかは五分と五分ですが……」
「今はとりあえず、こいつら倒すしかないだろ!とっととやるぞ!変身!」
シオン、蒼、キキ、そしてトオルは変身し、怪人の群れに突撃する。
サテライトも変身することはないが、それにつづく。
ただ一人、タタラは立ちすくんでいた。
「大丈夫、絶対に大丈夫だから、私……」
言い聞かせるが、手元のギアの輝きすら恐ろしいまま、体が震え始める。
「まだだめなの……?私、このままじゃ、ずっと足手まといに……」
「やはり駄目でしたか……では、これを!」
夜雲は蟹の怪人を蹴り飛ばしながら、タタラの方に何かを放りなげた。
それはカランと音を立て、彼女の目の前の地面に転がる。
「これは……」
拾い上げたそれは、銀色の変身装置。
「元部下からのせめてもの餞別です、それなら暴走の心配はありません……!」
「……!ありがとう、夜雲……」
「礼を言っている時間があるのなら、早く加勢を、正直この数は……!」
倉庫を埋め尽くさんばかりの怪人の群れに、追い打ちをかけるように湧き出すさらなる怪人の一群。圧倒的な数の暴力の前に、撃破が追いついていない。
「ご、ごめんなさい、よし……変身!」
タタラは深呼吸をし、腕に装着した装置──チェンジャーのレバーをひねる。
『The fearless empress!プラテナ!』
光に包まれ現れたのは、女性的なフォルムの銀色の戦士。抑えめな光沢を放つ水銀のように滑らかな装甲は、気品すら感じさせた。
「……いける!これなら!」
プラテナが腕を振り上げると、地面から噴水のように光り輝くカードが湧き出し、その手に寄り集まると弓のような形状に固まる。
「はあああああっ!!」
引き絞られた弓に光が寄り集まり、光の矢となる。プラテナは弦を離す──空中に解き放たれた光の矢は一瞬静止すると、数十、いや、数百に分裂し、怪人を次々と貫いていった。
「今のうちに!」
シオンたちは頷き、隠し扉の奥へと走った。