寒い
数分後、割れたガラスの散乱する六畳間。
「はぁ!?露出狂殺したの、お前じゃないの?」
「だから何度も言ったじゃねえか。」
シオンと中年男は、吹きこむ冷たい風に耐えながら話していた。
「昨日の夜、気晴らしに公園行ったんだよ。そしたら燃えてるみたいな怪人がなんかしてるとこ見ちゃってさ……」
見るからに強そうな相手にビビり変身して即座に逃げ出したが、それから暫く怖すぎて部屋で怪人の姿のまま震えていたと、男は語った。
「怪人の言うことを信じろと?それに、なんで持ってたんだよあの歯車。」
「あ、あれは……貰ったんだよ。」
「なんのために?そ誰に?」
「知らねえよ、ポストにはがきが来て、叶えたい願いを書いて投函しろって……3日したらあれと、使い方がポストに……」
ポスト?そういや先々週くらいから見てなかったな。地獄みたいな様相になっていないだろうか。
「あれがないと借金の取り立てに殺されちまう!なぁ頼むよあんた、ヒーローなら俺を守ってくれよ!」
中年男がシオンの足にしがみつくが、彼はすげなく振り払う。
「借金はお前の責任だろ?その窓も。」
「違う!俺は保証人になっただけで……何も……」
なおもすがりつこうとする男を払い除け、シオンは立ち上がる。
「じゃあな、せいぜい頑張れよ。」
と、シオンは振り返ることもなく、ドアを開ける。
ドアを開けた先にいたのは、二匹の怪人だった。
「どうも~。あっ、はじめまして。うちらね、キラキラローンの番沢と、こっちが暗黒ヶ原。あのー、あったばっかで申し訳ないんだけどね、鼠島さん、いる?」
「変身!」
『エンター!マスクドオン!ジュピター!』
シオンは変身すると同時に、番沢と名乗ったイノシシのような怪人を蹴り飛ばした。
通路の錆びた柵はその重さを支えきれず…そのまま怪人と「なんでー!」という叫び声とともに地面に落下していく。
「番沢さん!?え!?」
混乱する地獄ヶ原とかいう亀のような怪人も、ついでに蹴り落とす。
「アバァー!!」
地獄ヶ原の悲鳴、同時に金音。
柵と番沢が地面に落下した音だろう。