光の剣
「三本でもだめか……どうする?」
シオンは折れた剣の柄を地面に投げ捨てる。
「5本で行くか?」
ロムルスは首をひねりながら言う。
「二人共アホなことしてるみたいだけど。こっちの準備、終わったよ!」
上空からさてらいとの声。
見上げた二人は驚愕する。
「な、何あれ!?」
「すげえ……」
空に浮かぶさてらいとは掲げていた。巨大な光の剣──いや、柱と言ったほうがよいだろうか──その肩幅の2倍ほどの直径を持つ、ほとばしる光の束を。
「二人共、離れて!」
「おお!」「そりゃあな!」
シオンとロムルスは怪物から距離を取る。
「必殺!ネメシスソーーーードッッ!!」
と、さてらいとが振り下ろした光の剣は大気を焼き、空を裂きながら灰色に固まった怪物と接触し──その灰色の皮膚を、肉を焼き焦がし、左右の端数センチのみを残して蒸発させた。
「すげえ……」「そうだな……」
あまりの出来事に、シオンと蒼は語彙を失っていた。
光の剣は地面を炙り、数秒の後縮んで消える。
数センチずつ残された怪物の両端──ほとんど消し炭だが──は、風に煽られパタリと地面に倒れた。
「よし。ぶっつけ本番になったけど、意外とうまく……」
さてらいとは最後まで言い切ることなく、糸が切れた人形のように地面に落下し始めた。
「え、ちょ!?」
「俺が行く!」
焦るシオンを制止し、ロムルスは駆け出す。
「うおおお!」
叫びながら助走、跳躍し──空中でさてらいとを確保、そのまま地面に音もなく着地した。
「ヒヤヒヤさせてくれるぜ、全く。立てるか?」
ロムルスは抱きかかえていたさてらいとを地面に下ろす。
「すまないね。思ったよりエネルギーを食うみたいだ」
ふらつきながらも、さてらいとは地面に立つ。
「なにはともあれ、今回も僕たちの勝ちだ」と。
と、怪物の切れ端がピクリと動いた。ロムルスもサテライトも気がついていない──
「危ない!」
一人、気がついたシオンは駆け出した。まだ変身は解除していない──怪物の切れ端から尖った触手のような何かが、ロムルスめがけ一直線に飛び出した──シオンは蒼の前に立ちふさがり──
「ぐ……うっ!」
触手はシオンの左胸を貫く。シオンの口の中にぬるついた鉄の味が広がった。
永遠とも感じられる数秒の後、触手は先端をシオンの体内に残したまま切れ──自切だろうか?力なくぼとりと地面に落ちる。同時に、焦げた怪物の切れ端から、小さな何かが空に向かって打ち出された。
ジュピターの姿が光に包まれ、胸と口から血を流したシオンは地面に倒れ込む。
「シオン!」
嘆くように叫ぶ蒼の声も、その耳には届いていなかった。




