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第0話 人族と魔族の最終決戦

なろう初投稿です。よろしくお願いします。

 この世界には2つの種族が存在する。

 1つ目は人族。彼らは寿命が短く、身体的な強さも劣るが、知力を用いて種を繁栄させ、高度な文明を築き上げていた。

 2つ目は魔族。生殖能力が低い代わりに寿命が長く、強靭な肉体と莫大な魔力を持っていた。彼らは数こそ人族に劣るものの、特殊なスキルや魔法を用いて人族とは異なる文明を築き上げていた。

 最初こそ彼らは同じ大陸に住む者として互いに互いの領域を汚さない、すなわち不可侵を暗黙の了解としていた。

 しかし、互いの文明が発展すればするほど、他方の文明が邪魔になり、また妬ましく思うようになっていった。

 きっかけは、人族の国と魔族の国が隣接する場所で起こった小競り合いだった。

 それぞれの国に属する村同士の争いであったそれは、いつしか国同士の戦いとなり、遂には大陸全体を巻き込む大戦となった。

 それは、人族と魔族、互いの種の存続をかけた戦いだった。

 人族は聖なる神々の力を借り、自分達の技術力の粋を集めた武器を作り応戦した。

 対する魔族は己の肉体を主体とし、人族にはない特殊なスキルや独自に開発した魔法を駆使して戦った。

 それらの力は互いに拮抗し、なかなか決着がつかず、戦いは熾烈を極めた。

 そんな戦いが何百年と続いたある日、魔族には圧倒的な強さとカリスマ性を持った者が生まれた。後に「魔王」と呼ばれるその者の力により、魔族側が有利となって、人族が圧されるようになった。

 しかし、その何年か後に、人族にも強大な力と優しさを兼ね備えた者が生まれた。

 彼は後に「勇者」となり、勇者は魔族の長――魔王を倒すために世界各地へ旅を、魔王は人族の希望――勇者を倒すために様々な戦いを仕掛けた。

 勇者は人族の軍隊と共に魔族の猛攻を退け、遂に魔王の待つ城へと辿り着いた。

 勇者は魔王城の前に待ち受けていた幾千幾万という魔王軍を切り伏せ、その後に人族の軍隊が続いた。

 そして、人族の軍隊に魔王軍を抑えてもらいながら勇者は単身魔王城へと乗り込み、ようやく魔王のいる「魔王の間」へとやってきた。


「ようこそ、勇者よ。私こそがそなた達が魔王と呼ぶ存在。名をレオナードという」

「……ご丁寧にありがとう。俺はハルタだ。お前達が勇者と呼ぶ男だよ」

「そうか。では、ハルタ。長きに渡る種族の戦いに決着をつけようではないか」


 勇者と魔王が剣を構える。

 一瞬の静寂の後、彼らの戦いが始まった。

 しかし、彼らの戦いが始まった直後、魔王は自らが作った亜空間に勇者を引きずり込んだようだった。

 そのため、彼らの戦いとその決着を人族や魔族が見ることはできなくなった。

 残された人族の軍隊は勇者が、魔王軍は魔王が勝利して戻ってくるまで戦いを続けた。

 人族の軍隊も魔王城へ突入し、最終決戦が始まった。

 戦いが激しさを増す中、勇者も魔王も戻ってくることはなかった。

 だが、突然それまで人族の兵士に攻撃していた魔族の動きが止まった。

 それは一体のみならず、その場にいる全ての魔族が動かなくなった。


「……我らが王が亡くなられた。勇者に――人族に、我らは負けたのだ」


 魔族の誰かがそう言うと、魔族側の全員が降伏した。

 魔族は魔王と不思議な力で繋がっていた。

 その力が消失したことを感じた魔族は、魔王が勇者の手で殺されたことを理解した。

 そして、勇者が戻ってくれば、最早魔族側に勝ち目がないということも。

 だからこそ、彼らは降伏を選択した。

 せめて、魔族という種だけは残して欲しいと考えたから。

 人族の軍隊は降伏した魔王軍を縛り、魔王城を出て人族側の勝利を高らかに告げた。

 外で戦っていた魔族も降伏の意を示していた。

 人族の軍隊は自分達の完全勝利を確信した。

 しかし、勇者が戻ってくることはなかった。人族は勇者は魔王と相打ちになったと思った。

 人族の軍隊は共に戦った勇者の死を悼みながら、それぞれの国々へと凱旋した。

 そして、人族の軍隊が魔族の領域から出た直後。

 人族はその領域を全て燃やし尽くす大魔法を放った。

 それは魔族を滅ぼすために開発されていたもの。

 元より、人族は魔族の降伏を聞き入れるつもりなどなかった。

 魔族を生き残らせれば、また魔王が生まれるかもしれない。そうでなくとも、いつか復讐されるかしれない。

 そう考えれば、人族の非情な選択を責められる者はいないだろう。

 放たれた魔法により魔族達が住む領域はあっという間に火の海になり、魔族や彼らが作った物を全て飲み込んだ。

 炎は全てを燃やし尽くし、後にはただ焦土が残るだけ――になるはずだった。

 しかし、焼け野原の中に、建造物が一つだけ残っていた。

 それは、魔王城だった。

 魔族の技術の粋を集め作られた魔王城は、魔法に対する耐性も高く、非常に頑丈であった。

 表面こそ煤に塗れていたが、建物自体は傷一つ無かった。

 人族は再び兵士達を派遣し、生き残っている魔族がいないか城の中を調査させた。

 ほとんどの部屋は簡単に開いたため、中へと入り、魔族が残っていないことを確認した。

 だが、開かない部屋があった。

 勇者と魔王が戦っていた「魔王の間」と「宝物庫」だけは特殊な魔法がかけられているのか何をやっても扉はビクともしなかった。

 扉自体もやたらと頑丈で壊すこともできず、結局、魔法の使える兵が透視魔法で中を覗き見て誰もいないことを確認した。

 そうして、魔王城にも魔族が残っていないという報告を受けた人族の国々は、長きに渡る戦いの終結を宣言した。


 ――これが、10年前に起こった魔族との最終決戦の記録である。

 人族ならば、詳しさの差こそあれ、誰もが聞いたことのある話。

 だが、彼らは知らない。

 勇者と魔王が何を思い、何を望んで戦っていたのかを。

 彼らの最期を知る者は、この世にはいない。

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