プロローグ②
医師による問診が終わった後、身体のあちこちを触られ、頭の包帯を変えられた。その時に初めて自分がケガを負っていると気付いたぐらいだ。身体の不調は、少し気怠いと感じる程度だと伝えた時も、医師は怪訝な貌を止めなかった。
「「絆!」」
幾何かの時間が経ち、部屋に夕陽が差し込み始めた頃の事。
文句の付け様も無い見事なハーモニーを披露した、一組の男女が病室に飛び込んで来た。
わたしが目覚めたと知れてから、誰もがこの病室に落ち着いて入室していない。
それは、ユゲキズナの周囲に落ち着きが無い人達が集まったから、なのか。
それとも、ユゲキズナが周囲からそれだけ大切に想われているから、なのか。
わたしには、何もわからなかった。
せかせかと近寄り、わたしを抱きしめる女性の名前も。
その様子を見て、目元の涙を拭う男性の名前も。
そして、彼女達が呼ぶ、ユゲキズナと言う名前も。
「……あなたは、だれ? わたしは……キズナって言うの……?」
わたしには、何一つわからなかった。
その言葉に対して、看護師さんが泣き崩れた理由も、わたしを抱きしめる力が緩んだ原因も。
今ここで起こっている全ての事象が――わからなかった。