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第九話 一人のために



第九話「一人のために」





二人は城の長い廊下を駆け足で歩きながら話す。


「少人数でも良い、できれば何人かの兵を率いて国中の病院や診療所などに心臓の提供者がいるか探してほしいんだ!」


ヌトは言った。するとセンはヌトに問う。


「貴様は…どうするつもりだ?」


そして二人は王座がある広間の扉が開くと中に入った。


「俺も提供者がいないか探しながら五人の勇者も探そうと思っている」


ヌトはそう言うと、センの後に続きながら歩く。


「本当に一人で行くつもりか?」


「あぁ、そのつもりだ」


「…わかった」


そう言うとセンは王座に座り、再び口を開けた。




「ならばゼーガルで一番優秀な兵士を連れて行くが良い…来い!ディオ!」


「は!王様!」


そしてセンはハヌルで優秀な兵士の名を呼んだ。

すると何処からか声が聞こえ、その一人の兵士が王の前にやって来た。


「ディオ、此処にいるヌト・パーカーの御供として旅について行け!」


「御意!」


「おい…ちょっと待てよ!優秀な兵士がゼーガルを出て俺について来て大丈夫なのか?」


ヌトは余りにも急な展開に動揺していた。


「あぁ、俺が此処にいる限り心配は無用だ、貴様は気にするな」


センは腕を組みながら平然とした口調で言った。


「そうか…悪いなセン、何から何まで恩にきるよ」



とヌトは礼を言う。







すると突然、ヌトの背後から物音がしたと同時に一人の男が現れた。


「当然、俺も連れて行くよな?」


そう言うとその男は微笑んだ。


「エド…⁈」


「エドワード、貴様はまた病院を抜け出して来たのか?」





エドと言われたその男の名はエドワード・ジャクソンだ。

突然の旧友の姿にヌトは驚きを隠せないでいた。


「久しぶりだな、ヌト!」


とエドワードは手を振る。


そしてヌトもまだ驚きながらも返事をする。


「あぁ、久しぶりだな…お前怪我は?もう動いて大丈夫なのか?」


「あぁ!だいじょ…」


「大丈夫ではない、早く病院に戻れ!」




エドワードは大丈夫と言いかけたが、それはセンによって掻き消された。


「やっぱり、その様子だと…まだ完治してないよな…」


とヌトは少し苦笑いをした。


「見た目はこんなだが、大丈夫だ!もう充分に動ける!」




とエドは言うが、右腕にはまだ包帯が巻かれていて痛々しさを感じた。そしてエドは話し続ける。



「それに神の魂を受け継がれし者の五人の内の三人は俺達の息子だろ?だったら、後の二人を探し出せば…」


「甘く見るな!」


とセンは再びエドの話を遮ると溜息を吐く。


「…本当、息子はエドに似てるな」


とヌトは言った。


「息子…アラナか?アラナに!アラナに会ったのか?」


「あぁ、お前に似てきてるよ 外見も性格も」


「で?アラナは元気だったか?」


「それが…」




とヌトは、今アラナは怪我をしている事とセデラルに神の心臓の在処を知っている者の事を話した。



「貴様!何故それを早く言わないか!」


センは王座から立ち上がり言った。


「…すまん、息子の事で頭が回らなかった…」


「大丈夫なんだろ?アラナの怪我は…」


とエドは当然に息子の心配をする


「あぁ、今は安静にして回復していってると思う…」


「そっか、なら良かった」


それを聞いて、エドは少しは安心した顔を見せた。




「…それで、その神の子と名乗る者は捕まえたのか?」


とセンは問う。


「いや、逃げられた…ゼンと俺が来た時にはもう…遅かった」


「なんだと…!貴様らは…」


とセンは今日で何回目か分からない溜息を吐く。





















ドミニクが帰った後ハランは一人、神が最期を遂げた海、ラストブルーに来ていた。


ラストブルーには今でも神の体が底に眠っていると古くから云われている。

ハランは何かあると必ずと言っていいほど

ここに来ては陽が落ちるまでいることが多い。


そしてハランは波打ち際まで来ると海の潮風の匂いがハランの鼻をくすぐった。


先、ドミニクから聞いた話をハランは思い返していた。










「…じゃあ、父さんが帰って来るのはいつになるか、わからないの?」



ハランの心は衝撃を隠せないくらい動揺していた。するとハランの言葉にドミニクは頷きながら言った。



「あぁ、こればっかりはな…」


「もし、父さんが帰って来なかったらレオンは死んでしまう…の?」


「…それはまだ、何とも言えん」



そして視線を背けるドミニクにハランは察した。



「でもハラン、レオンを守りたいのは皆一緒なんだ!私も皆も全力を尽くしてレオンに心臓を提供してくれる人を探している!だから今は奇跡を起こるのを信じよう…!」



だが、ドミニクの励ます声も今のハランには届かずハランは下を向いたまま動かなかった。















「…すぐ帰ってくる、て言ったのに…」



そう呟いたハランの声さえも波の音によって掻き消される。

波がハランの足元に来ては遠去かりを繰り返して足につきそうでつかない。

そんな距離の波をハランはずっと見ていた。



そして、願って待っている事しか出来ない自分の無力さにハランは再び嫌気がさす。



そんなハランの心とは裏腹に天気は快晴だった。雲一つない青一色の空には眩しいくらいの太陽の光が海に反射しては美しく輝いた。それに思わずハランは目を顰める。






















出発の時、城門の前でヌトはセンとエドワードに暫しの別れを告げる。




「エドが協力してくれるのは嬉しいが、今は自分の体を大事にしてほしい…」



とヌトはエドワードの怪我をしてない方の肩に手をおきながら言った。



「確かに…俺はまだ、全回復とは言えないし足枷になってしまうかも知れない…だが!」



するとエドワードは肩におかれたヌトの手を振り払い、話し続ける。



「一人より二人、二人より三人、三人より四人そうやって重荷を一人で抱えるより皆で分け合った方が少しは軽くなるだろ?だから、俺は反対されてでも共に行くよ!」


「エドワード…!ありがとな」



とヌトが言うと、エドワードは少し照れくさそうに微笑んだ。



「これ以上言っても、聞き耳持たぬな…」



とセンは呆れた様子で言うとエドワードは、悪いなセン!と無邪気な笑顔で言った。

するとそれに対して、思ってもいないだろうと心の中で呟くセン。



「拗ねるなって!」



とエドワードは笑いながらセンの背中を強めに一発叩くと、周りに居た何人かの衛兵が響めき始めたがセンはそれを何時もの事だと阻止した。



「ヌト、ディオ、そしてアラナ!何かあれば必ず直ぐ報告しろ!わかったな!」



三人はそれぞれ返事をした。





そしてこれから、息子の命を救う為の長い旅が始まる。



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