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第五話 再び、迷いの森に…



第五話「再び、迷いの森に…」




もう外は陽が落ちていた。ヌトは泣き止まないレオンを外に連れて来ては、ドミニクを呼びに行くと家を出てから中々帰って来ないゼンを待つ。


そして何分か経った頃、ドミニクが血相を変えて走って来た。ドミニクは息を切らして、何か言いたそうに必死に呼吸をしている。しかし、一緒にいるはずのゼンの姿は見当たらなかった。


「ドミニク先生、そんなに慌てて来なくても待ってられますよ」


ヌトは微笑みながら言う。


「ゼ、ゼ、ゼ…」


「ゼ?ゼ…て何ですか先生⁈」


「ゼ、ゼンが…!」


「ゼン?ゼンが何です⁈先生、落ち着いて!」


ドミニクは荒くなる息を落ち着かせて話し始める。


「ハランとアラナが迷いの森に…!」


「どうして、ハランとアラナは迷いの森に?」


「ゼンが言うには…二人は神の子だと名のる何者かを見つけたみたいだ、その者を追っては迷いの森に入ったと…君の愛犬のルゥが来て教えてくれたんだ、それを知ったゼンは二人を助けに迷いの森に…!」


ヌトは少し考えると言った。


「分かりました…」


そして、泣くレオンの顔を惜しみながらドミニクに預ける。


「ドミニク先生、レオンを頼みます…!」


「分かった、レオンの容態はゼンから聞いてるよ」


「すぐ、戻って来ます!」


とヌトは走り出した。


















ハランが叫んだのと同時に、もう一度ルゥの吠える鳴声が聞こえたかと思えばルゥは少年を突き倒した。


「ルゥ!」


やっぱり、先のはルゥの鳴声だったんだ!そう思ったハランは地面に倒れこんでいるアラナに駆け寄る。


「アラナ!大丈夫か?」


ハランは、ゆっくりとアラナの上半身を起こした。大丈夫…と頷き眉間に皺を寄せては痛む腹を抑えながらアラナは言った。だがアラナは、これ以上は動けせそうになかった。そして、ルゥは少年が短剣を持つ左腕に勢い良く噛みついた。すると少年はルゥを思い切り腕から振り払い、ルゥはハランとアラナの方へと投げ出される。


「ルゥ…!」


ハランは急いで駆け寄ると、激しく地面に打たれて弱っているルゥを抱きしめる。そして少年は左腕が流血していながらも短剣をハランの方に向けた。

なんと、少年が短剣を持つ腕には先まで気づかなかったが、ハランと同じ腕輪を着けていた。それを見たハランは驚いた。


「な、なんで…それを⁈もしかして…君も神の魂を受け継いた者の一人なの…?」


「驚いたか?あぁ、その通りだ…」


ルゥに噛まれ出血している少年は苦しそうに言いながら徐々にハランの方へと近づいて来る。ハランは弱っているルゥをアラナに預けると少年に言った。


「じゃあ、君は神の子じゃないの…?」


「だったらどうなんだ…」


「ならどうして自分は神の子だなんて名乗ってるんだ?」


「関係ないお前に、話すわけないだろ」


「関係なくない…!僕だって君と同じ神の魂を受け継いた者の一人なんだ!」


「だがそれは(腕輪)今から俺の物になる、この俺の腕輪だけでは封印は解かれないらしい…」


そう言うと腕輪に付いている石の力によって少年の短剣が青く光りだした。


「前に聞いた事がある…五つの腕輪の力が合わさり神の心臓は封印されたと…」


少年は続ける。


「もし…心臓を取り戻すには封印した時と同じく、この腕輪が五つ揃わらなければ解かれないのなら…その為にもお前の腕輪を手に入れる!」


そして少年は再び短剣を振りかざす。


「そうはさせない!」


そう言うとハランは危機一髪で短剣を避けたが、少年の動きは早かった。少年はハランの足首を引っかけるとハランは地面に倒れた。そして、すかさずハランの首元に短剣を向けた。








「ハラン!アラナ!何処だ!」


その時、誰かの声が遠くから聞こえた。ハランと少年は同時に声が聞こえた方へと顔を向けるが姿が見えない。すると徐々に木々の間から人影が見えてきた。


「くそ、また邪魔者か…!」


そう言うと腕から大量な出血をしている少年は足元をふらつかせながらその場を去って行った。



「ハラン!アラナ!」


ハランとアラナを見つけたゼンは、すぐさま

二人のもとに駆け寄った。ハランは弱ったルゥを心配そうに抱えて、か細い声で言った。


「ゼンさん…アラナとルゥが…」


今にも泣き出しそうだった。そしてハランの横にいるアラナは蹴られた腹を抑え苦しそうにしている。するとゼンの後から来たヌトはハラン、アラナ、ルゥの弱気った姿を見て言った。


「例の神の子は何処だ?」


冷静に聞いているようで、どこか怒りが入り混じったような口調だった。そしてハランとアラナは黙って首を横に振る。逃げられた、とゼンは地面についた血の跡を見ながら言った。ヌトは少年の後を追いかけようとしたその時、ゼンがヌトの肩を抑えて顔を横に振る。それを見たヌトは悔しさのあまり唇を噛み締め拳を強く握りしめた。

















迷いの森を出た四人と一匹。弱っているアラナにゼンは自分の肩を貸し、その隣をハランと愛犬のルゥを抱えているヌトが歩いていた。もうすぐでイチゴイチエが見えてくる頃だった。ハランが突然その場を立ち止まり、呟くように言った。


「…父さん、ごめんなさい」


ハランの声と手は震えていた。きっと怖い目に合ったんだろう、また大切な人をハランは目の前で亡くしてしまうのではないかと怖かったんだろう、ヌトはそう思った。そしてハランは続ける。


「また、勝手なことをした…でも、こんなことになるなんて…!」


ハランは震える手を握りしめた。

ハラン、と呼ぶとヌトは弱っているルゥを抱えてながらハランと同じ目線の高さまでしゃがんで言った。


「命は一つしかない、それを一番よく分かってるのはハランお前だろ?それを大事にしなきゃいけないのもお前は知ってる。」


な?と優しい口調で言うヌトにハランは頷いた。


「でも、何でもかんでも自分で決めないで父さんに少しでも相談してほしいな、だって親子だろ?」


とヌトは微笑むとハランの瞳から自然と涙が流れた。




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