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第四話 神の心臓



第四話「神の心臓」





秘密基地に着くとハランとアラナは直ぐさま異変に気づいた。秘密基地の中が何者かによって荒らされていた。


「なんだ…これ…」


「…どろぼう?」


「まるで、何かを探しているみたいだ」


「もしかして…?」


とハランが言うと二人は目を丸くして見合う。


「おい、ハラン!これを見ろ!」


するとアラナは外をでて地面の方を指差した。昨日の夜に雨が降ったからか、土の地面が濡れていて足跡が残っていた。足跡は何処かへと行くように続く。


「行くぞ、ハラン!」


「うん!」


二人は足跡の主を捜すべく、秘密基地を出てその足跡を追う。













ゼンが、カウンターの方でコーヒー淹れていた。部屋にコーヒーの香りが漂う中、赤ちゃんの泣く声が部屋中に響き渡った。ソファに眠っていたレオンをヌトは慌てて抱き上げる。


「よしよし、良い子だレオン」


「起きたのか?」


ほら、と言ってはテーブルの上にミルクが入った哺乳瓶を置いた。


「ありがとう、ゼン」


「レオンはお前に似てないな、クララに似てる」


とゼンは微笑みながら言ってはソファに座る。


「そうだな、目のあたりとか鼻とかクララにそっくりだよな」


ヌトはレオンにミルクを飲ませようとするが、なかなか飲まない。


「どうしたレオン、腹空いてないのか?」


レオンは泣き止まない。


「朝から、こうなんだ…」


ヌトは眉間に皺を寄せて困惑する。


「朝はミルクを飲んだのか?」


とゼンは聞く。


「少しだけ…いや半分は残したな」


熱でもあるんじゃないか?とゼンはレオンのおでこに手をあてる。そして言った。


「熱は無さそうだな、一応ドミニク先生に診てもらおう」


「あぁ、そうだな」


とヌトはソファから立ち上がろうとしたが、ゼンがそれを阻止した。


「俺が行ってくるよ、ヌトはレオンの側に居てくれ」


「悪い、頼む」


あぁ行ってくる、そう言うとゼンはイチゴイチエを後にした。

ヌトは泣き続けるレオンを必死になってあやす。














辺りはもう夕暮れに近くなりつつあった。ハランとアラナは足跡の主を探し続ける中、アラナが言った。


「足跡はここまでで消えてる…」


「ねぇ、アラナ…ここって…」


と未だに足跡を付けた人物は誰なのかを考え頭を悩ませるアラナの肩をハランは叩く。少し震えているハランの声にアラナは足跡から目を離し、ハランの顔を見る。ハランは驚いた表情で、それを見ている。


「なんだよ…」


アラナは思考を止められ、少し荒い口調で言った。そして、ハランが見る先に目を向けるとアラナもハランと同様驚いた表情に変わる。


「もり…?迷いの森…」


どこからどう見ても迷いの森へと続く道だった。

二人はこの足跡が、もしかしたら王様が言っていた神の子と名のる者じゃないかと疑っていたが、確信に変わった。ハランとアラナは顔を見合わせ頷くと迷いの森の中へ入って行く。



少し歩くと、アラナが言った。


「大丈夫か?ハラン、顔色が悪いぞ。」


「うん、大丈夫…」


「無理するなよ?」


ハランはあの日、迷いの森に入って以来から今も自分の腕に着けている腕輪の力に少し恐怖を抱いていた。ハランは拳を握り締めると一呼吸ついてから、また歩き始める。


「やっぱり、思った通りだ…足跡が続いてる!」


すると突然、ハランが着けている腕輪が光始めた。再び、あの日と同じように腕輪の石の光が神の心臓が封印されている湖へと導く。


「足跡も、この光が射す道と同じ方向にあるな…」


すると、ハランは足跡の先の方を指差しながら言った。


「ア、アラナ!あそこ…誰かいる!」


二人は足を止めると木々の間から様子を伺った。

その足跡の主は心臓が封印されている湖の前で何かをしようとしていた。そして左手を水の中に浸けると、突然湖一面が光り輝きだし湖の水が勢いよく溢れ出した。

このままだと神の心臓の封印が解かれてしまうと思ったハランとアラナは顔を見合わせ頷くと封印を解こうとしている足跡の主を止めようと二人は走り出した。

すると、あの日同様に強風が吹きハランとアラナは立っていられないくらいになり、その場をしゃがみこむ。



その瞬間、突然犬の鳴声が聞こえた。


「ルゥ⁈」


ハランとアラナはルゥの鳴声がした方に振り向いたが、ルゥの姿が見あたらない。

途端に先までの強風は止み、ハランの腕輪の石の光も消えた。ハランとアラナはルゥの吠える鳴声は気のせいだったのかと思い、湖の方へと顔を戻すとそこには先までいた足跡の主がいなくなっていた。


「いない⁈」


「あいつはどこ行った⁈」


二人は慌てて立ち上がり辺りを見回す。

その瞬間、アラナは背後に殺気を感じたが遅かった。木々の間から射す月の光に反射して銀色に光る何かがアラナの首辺りに向けられていた。


「…アラナ!」


それに気づいたハランが言った。


「動くな!」


その足跡の主は短剣をアラナの首辺りに向けながら、ハランに言った。


「もしかして…君が噂の神の子…?」


ハランとアラナは驚いていた。

なんと、その足跡の主は二人と同じぐらいの歳の少年だった。


「お前らは何者だ、何しに来た!」


その少年は言った。


「君が神の心臓の封印を解くのを止めに来た!君こそ心臓を手に入れて、何しようとしているんだ!」


ハランは言った。

少年は小柄で灰色に近い髪の毛をしていた。子供ながらに鋭く冷たい青い瞳がハランを射抜く。そして少年は言った。


「封印を解き、ここに封印されている神の心臓と海に眠っている神の体を取り戻しに来た」


「取り戻しに…?君は本当に神の子なのか?」


「言ったところで、お前らには分からない」


その少年は馬鹿にしたような口調で言った。


「なんだと!」


人質となっているアラナが怒鳴った。


「アラナ、落ち着いて!」


ハランは怒って反抗しようとしているアラナに言った。

すると、ハランが着けている腕輪に気づいたのか少年は言った。


「お前、その腕輪をどこで拾った?」


「腕輪…?これは拾ってない、父から受け継いだんだ!」


「お前が…⁈」


驚いた表情でハランを見つめる。そして少年は少し考えて言った。


「お前の腕輪を渡せ!」


「…で、できない」


「なら、どうなるか分かってるのか?」


アラナの首にある短剣がきらりと光る。


「やめろ!わかった…」


そう言うと、付けていた腕輪を外そうとするハランにアラナは言った。


「ハラン!渡すな!」


「アラナ、でも…」


「ハラン、こんな奴に死んでも渡すな!絶対にだ!」


「お前、死にたいのか?」


と少年が言った瞬間、アラナは腹を蹴られ地面に倒れこむ。


「アラナ!」


ハランが叫ぶと少年は、地面に倒れ苦しむアラナの胸倉を掴むと短剣を振りかざす。


「やめろ!!」




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