6話
新キャラが出ますよ〜
〜9月6日 AM7:30〜
「お嬢様。今日は何をなさいますか?」
とある日の朝、私は沙知さんの用意してくれた朝ごはんを食べ終え、処方されている薬を飲み終えた所で沙知さんはエプロン姿で聞いてきた。
「んー……今日は午前までだっけ講義」
「左様でございますお嬢様」
「うん。じゃあ大学終わったら今日はインデスにログインするよ私」
「かしこまりました。では、車を用意致します」
「うん。お願い沙知さん」
「やっほー響〜。元気ー?」
「ん、おはよう桜子。軽く気だるいけど平気」
講堂に入ると、長い黒髪を紐で一つにまとめた和服姿の私の友人『香風 桜子』が手を振って挨拶をしてきたので、私も軽く手を振って返す。
「フッフッフ〜。響はちんまいからいつ見ても可愛いなぁ〜」
「体はちっちゃくても心は大きいからいいんですー。というか桜子が大きすぎるだけでしょ?」
桜子の言う通り、私はかなり小さく、150センチに届くかどうかという小ささだ。それに比べて桜子は女性なのに身長は180近くあり、出るところは出ているという所謂ないすばでぃーな奴だ。羨ましい。
ちなみに、インデスでは身長が盛れたので160前半にしているのは秘密だ。ゲームくらい大きく居たいんだもん。胸は無理でしたがね!?(ヤケクソ)
「あ、ところで響。響ってインデスやってる?」
「うんやってるよ。三日前からね」
私を膝に乗せて頭を撫でる桜子に答えつつ、鉄分補給バーを頬張る。
「むっふっふー。実は私もインデス先週からやってるんだよね!」
桜子はそういってその大きな胸をそらし、周囲の人々の視線がその胸に集中するけど、私がギリッと睨みつけすぐに目をそらした。
「へー。それは初耳。陣営は?」
「ユニテッド!ヤオヨロズを選びそうな格好なのにユニテッドやってんじゃねーよだって?大人の事情だヨ☆」
「誰に向けて言ってるの?私もユニテッド」
「よっしゃ!じゃあ午後一緒に遊ぼ!待ち合わせ場所は中央の噴水ね」
桜子は嬉しそうに頭を撫で、今度は頬ずりもし始めた。
「ウニャンウニャンウニャン。やめて。じゃあ今日の午後2時からやろう」
「りょーかーい」
桜子から解放され、私は定位置ともいえる彼女の隣の席に座り鞄から筆記用具とノートを取り出して机に広げると同時に講義開始のチャイムが鳴った。
「ん〜、終わったにゃ〜」
「そう言って私を撫でないでくれる?」
「疲れたあとにヒビキニウムを補給するのだッ。ウリウリ〜」
「やーめーてー」
また私が桜子に撫でられていると、
「香風様、お嬢様はお体が弱い身。あまり障りそうなことはお控えください」
「あ、斜陽さん。ごめんなさーい」
沙知さんがいつのまにかおり、桜子を窘めると彼女は素直に従い私から手を離した。
そしてさらに、
「お嬢。迎えを用意できやした」
「あ、高城〜。随分と早いねー。褒めてあげる」
「いえ、これが俺の仕事ですから。俺は車で待ってやす」
高城と呼ばれたいかつい黒服の人はそういうと、私と斜陽さんを順に一瞥すると少しだけ頭を下げて講堂から出ていった。
「桜子。あの人は?」
「んー、高城はねー。私が小さい頃から隣にいるお目付け役……?」
「沙知さんみたいな人?」
「そういうことかもねー。んじゃ、桜子さんは帰るよバーイ!」
「ばいばーい。沙知さん。私も帰ろっか」
「あの高城という方……だいぶ出来ますわね。フフッ、久方ぶりに昂りました」
「沙知さん……?」
ほのかに赤い瞳を輝かせ、沙知さんは楽しそうに呟いたのを私は聞き逃さなかった。
〜インデスログイン〜
「あら、マスター。こちらの世界だと8日ぶりかしら?」
「うん、おはようジャッジメント。今日は友達と遊ぶからよろしくね」
「そう。それは楽しみだわ」
今現在のリアルの時間は午後の1時55分。桜子との待ち合わせまでリアルだと5分だけど、こっちの時間の流れは向こうより4倍の速さなのでこちらの世界だと20分といったところだ。
「そういえばマスター。今のレベルどれくらいなのかしら?」
「あ、そういえば確認してなかったね」
メニューを開き、ステータス画面に移動する。
名前:ヒビキ
性別:女
素性:浮浪者
レベル:14
体力(HP):15
筋力(STR):15
魔力(MP):10
生命力(VIT):10
速度(AGI):22
技量(DEX):22
耐久力(END):10
理力(INT):16
幸運(LUK):9
信仰(FAI):4
正気(SUN):2
スキル:《曲刀 Lv.2》《隠蔽 Lv.1》《気配遮断 Lv.1》《》《》《》
現在保有成長ポイント:26
「わわ……なんか結構レベル上がってる」
「それはダークナイトを倒した際の経験値でしょうね」
なるほど……というかあんな強敵を倒したのに上がったレベルが8って釈然としないなぁ。いや、このゲームの経験値が塩っぱいのか……
とりあえずポイントを振り分けていく。
筋力に4つ生命力に3、速度と技量に8つ、正気に2つで残り成長ポイントが1つ残ったけどこれは残しておく。
次はスキル枠だ。
このゲームは初期のスキル枠は3つでらレベルアップで一定のレベルになると、スキル枠が増えていく。レベル9と10で1つずつ。レベル14と15で1つずつ。そして20で2つ増え、それから20レベル増えるごとにスキル枠が2つずつ増加していくのだ。
だけど、希にスキル枠を消費しない特殊なスキルがあるらしい。
そして私のレベルは14なので、今のスキル枠は6つだ。
今私が取れそうなスキルはこれかな。
《両手剣 Lv.1》
両手剣カテゴリーの武器を装備時、攻撃力に補正とスキルが使える。
両手剣専用アーツが使用可能になる。
《片手剣 Lv.1》
片手剣カテゴリーの武器を装備時、攻撃力に補正とスキルが使える。
片手剣専用アーツが使用可能になる。
《戦斧 Lv.1》
戦斧カテゴリーの武器を装備時、攻撃力に補正とスキルが使える。
戦斧専用アーツが使用可能になる。
《戦鎚 Lv.1》
戦鎚カテゴリーの武器を装備時、攻撃力に補正とスキルが使える。
戦鎚専用アーツが使用可能になる。
《槍 Lv.1》
槍カテゴリーの武器を装備時、攻撃力に補正とスキルが使える。
槍専用アーツが使用可能になる。
《弓 Lv.1》などといった攻撃系。
弓カテゴリーの武器を装備時、攻撃力に補正とスキルが使える。
弓専用アーツが使用可能になる。
といった、攻撃系スキル。
《歩術 Lv.1》
移動、ステップの速度を高め、補術系アーツを使用可能になる。
《鑑定 Lv.1》
モンスターやアイテム、武器の詳細な情報が閲覧出来る。
《短文詠唱 Lv.1》
魔術を使う時のスピードが早くなる。
《物理耐性 Lv.1》
物理系の攻撃のダメージを減らす。
《属性耐性 Lv.1》
属性系の攻撃のダメージを減らす。
《魔術耐性 Lv.1》
魔術系の攻撃のダメージを減らす。
《騎乗 Lv.1》
乗り物を操作することが出来る。
《薬品調合 Lv.1》
素材を調合してアイテムを作ることが出来る。
《錬金術 Lv.1》
素材を用いて錬金をすることが出来る。
などといったサポート系。
《料理 Lv.1》
料理をすることが出来る。
《裁縫 Lv.1》
裁縫をすることが出来る。
《農業 Lv.1》
農業をすることができる。
《鍛冶 Lv.1》
鍛冶をすることが出来る。
フレーバー系スキル。
その中で私は攻撃スキル《両手剣 Lv.1》とサポートスキル《歩術 Lv.1》を選択して、スキルを獲得した。
理由としては、ダークナイトから手に入れたあの剣を使うためなのと、私のステータス構成なら移動速度をあげる歩術がいいと思ったからだ。
そして最後のひとつは一応取っておく。
次は装備欄に移動する。
昨日鍛冶屋で買った防具と、黒騎士の剣をタッチすると『装備しますか? YES/NO』という質問が出てきて、YESボタンを押す。
一瞬だけ私の体が光ると、次の瞬間にはフードのついた真っ黒なマントを纏い、その下には動きやすいように短パンと半袖のシャツの上にベストの姿。
両手にはガントレット、足にはグリーブ。材質は『低質ミスリル合金』というもので、この素材を使った装備は序盤のプレイヤーの間ではかなり強力な装備らしいことを兄さんから聞いていたため、大金をはたいて揃えたのだ。
ちなみにこれ、ひとつ50万とちょっとしたんですよ?それを2つ。一瞬で溶けましたよ。おかげで懐がすごく寂しいですよ。ハハハ
「ねぇマスター。かるくトリップしているところ悪いのだけれど……何か私たちに手を振りながら走ってくる変なのがいるのだけれど?」
ジャッジメントの言葉に意識が戻され、その人物に桜子が来たのだと予想をつけた。
変なのって言うのが気になるけど……
「あぁ、多分それさっき言った私のともだ──」
熊の着ぐるみがいた。けど、熊と言うには所々に包帯が巻かれ手足の爪や牙には血のようなものがあり、その口にはなにやら髪の毛のようなものがはみ出ている中々にヤベーのが来ていた。
「うん。あんなのは私の友達じゃないね。ただのヤベー奴だね。うん」
『響ィ〜!!』
「思いっきりマスターの名前叫んでるのだけれど?」
ちくしょう!わかっていたさバカヤロー!なんで私の知り合いってこの世界に出会うと馬鹿な恰好なんだよ!そんな運命なの!?
そんな私の心の叫びを知ってか知らずか、着ぐるみは着ぐるみのまま私に抱きついてきた。
『きゃー!こっちの世界の響かわいい〜!けどなんだか大きいね〜。あ、ひょっとしてリアルで小さいからこっちでは大きくなりたいってことかな?も〜、響はそのままでも十分可愛いゾ☆』
「うるさーい!ちんまいこと少しは気にしてるんだぞよ!!というか、はーなーしーてー!!暑苦しい!」
私はもがくけど桜子の腕はビクともしないで、逆にもっと強く抱き締めてきやがった。
こっちでも力つよ!?
「ちょっと貴方。いくらマスターの御友人といえど、些か失礼が過ぎて?」
そうしていると、ジャッジメントが桜子の手首を握り桜子を嗜めた。そうだー、そのまま私を助けてくれー。
『か……』
「か?」
『かわいいぃぃぃい!!』
「ちょ、なにす……ムグ!?」
哀れジャッジメント。ジャッジメントはリアルの私並みのサイズなので桜子の性癖『小さくて可愛いもの』にどストライクなのだ。
まぁ、私が助かったのでありがたいですが。ハハッ
「何するのよこの変態!今すぐ私を解放なさい!!マスター!見てないで今すぐ私を助けてちょうだい!?」
「イヤー、タスケタイナー。タスケタインダケドナー」
『ひゃっほー!黒髪ロングのクールロリ最高だゼェ!!』
「きゃぁぁあ!?どこ触ってるのよ!離しなさいよー!!」
こうなった桜子は長いので、私は近くのベンチに腰掛けて待つことにした。いや、別に止めるのが面倒だなんて思ってませんよ?
それから程なくして、ジャッジメントは桜子から解放されたのだけれど、頬を上気させながら荒く息を吐いていて目の端には涙が溜まり、紳士からしたら興奮ものな状態になっていた。
「いやー、あまりの可愛さに我を忘れちゃってたよ。ごめんね!」
着ぐるみを頭部分を脱ぎ、桜子はそういって笑いながら謝ってきた。
「はぁ……はぁ……このケダモノ!牛乳!」
ジャッジメントはそれだけ言い残すと、宝石に戻ってしまい私と桜子の2人だけになってしまう。
「嫌われちゃったかにゃー?」
「間違いなくジャッジメントの苦手リストに入っただろうね」
「ふっ、嫌がる子を愛でるのは嫌いじゃないぜ」
「はぁ……」
桜色の髪の毛を揺らし、心底楽しそうに言う桜子に私は呆れ混じりにため息を吐いた。
「ところで桜子。なんでそんな恰好なの?」
私が桜子へ思ってた疑問を投げかけると、帰ってきた回答はやはり呆れるようなものだった。
「ほら、インパクトって大事じゃん?だからこれやったんだよね〜」
「うん。確かにインパクト大だね。悪い方で」
ちょっと頭痛くなってきたな……
「よいっしょっと……」
軽く額を抑えていると、桜子は着ぐるみを脱ぎ始めた。
「って……着物の上に着ぐるみやってたの?」
「そうだよー。いやー、動きにくいね!!」
着ぐるみの下の桜子の服は上部分が桜柄薄桃色の着物で、下は藍色の袴姿で腰には刀が吊り下げられている出で立ちなのだが……よくもまぁ着ぐるみを着れたものだ。
そしてやっぱり胸がでかい。………気にしてませんよ?
「響は動きやすそうな格好だね〜」
「ステータス構成がスピードと技量に振ってるからね。手数を増やすためにしてるんだよね」
「なのにそんな重そうな武器使うんだね」
桜子はそういって私の背負ってる黒騎士の剣を指さした。
「ん、平気だよ」
この剣は重そうな見た目をしているけど、意外と私が持つと重さを感じないのだ。
それに、私の武器はこれだけじゃなくジャッジメントもいるので心配はない。
今考えている私の戦闘スタイルは、黒騎士の剣でダメージを与えつつ、懐に飛び込んだらジャッジメントの双剣で張り付きながら攻撃する感じだ。
「それじゃあ、まずはフレンド登録しよ響!」
「それもそうだね。忘れてた」
「よーし。じゃあほほいのほいっと」
ピロン♪電子音と共に『目の前のプレイヤーからフレンド申請が来ました。どうしますか?【YES/NO】』と文字の書かれたウィンドウが表示され、私はYESを押す。
『フレンド登録が完了しました』
すると、桜子の頭上のアイコンがフレンドを示すFマークに変化した。
「桜子こっちでは『サクラ』って名前なんだね」
「そっちは『ヒビキ』って。マンマだねー」
「ありふれてるからねー」
「ほほう。父方の名前は使おうとは思わなかったの?」
「それって『チェルシー』?」
「そうそう」
「いやー、だってあんまり使わない名前だしなぁ……」
というかそもそも選択肢にすら入ってませんでしたね。ハイ
そういえば、私のフルネームを言ってなかったっけ。私には母方の名前『神無月 響』ともう1つの父方の名前の『チェルシー・ルナ・セラフィ』という。
けど、生まれも育ちも日本のため基本的にはこの名前は使わため、頭からすっぽ抜けていうわけだ。
「じゃあ桜子。今日は何する?私は特にやりたいことないから貴方が決めて」
「ふーむ……じゃあ響ってばギルドに登録してる?」
「ギルド?」
「そ、ギルド!」
桜子はそう答えると、ニヒリと笑った。
"神無月 響"
年齢:19
身長:146.2
体重:35.7
好きなこと:パズル
嫌いなこと:薬を飲む
髪色:白
瞳:暗赤色
特徴:体が生まれつき弱く、肌が紫外線に弱いためにとても華奢。週二で通院している。
兄と姉を上に持ち、その末っ子。
ちなみにお嬢様で、住んでるところは親が響のために用意した都内の一軒家で、お世話係と共に二人暮し。
"香風 桜子"
年齢:20
身長:182
体重:61.3
髪色:黒
瞳:黒
好きなこと:可愛いものを愛でる
嫌いなこと:勉強
特徴:響の友達で、隙あらば彼女を愛でる。小さくて可愛ければなんでも好き。
よく後ろに黒服のグラサンの強面のあんちゃんがいるため、極道の娘と噂されているが真偽は確かではない。
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なんとなーく2人のプロフィールやってみました。女性のプロフィールってムズいっすね。
それでは誤字脱字のご報告。感想と評価をお待ちしておりますます!