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片翼シリーズ番外編  作者: 星宮歌
私、異世界で監禁されました!?の番外編
9/41

変化魔法(ジークフリート視点)

最近、この作品のタイトルを『片翼シリーズ番外編』にしようかと考え中……多分、そのうち変更します。


それでは、どうぞ!

 ユーカがリアン魔国から帰ってきて、舞踏会の準備に時間を取られている頃のことだ。俺は、少し休憩に入ってユーカの部屋へ向かおうとしていると、そのユーカ本人が廊下を歩いているのを見つけ、幸せな気分になりながら声をかける。



「ユーカ」


「あっ、ジーク、さん。休憩ですか?」


「あぁ、少しな。ところで、ユーカはどこへ行くつもりだったんだ?」


「えっと、図書室に本を借りに行こうかと」



 リリとライナードが遠巻きに俺達を見る中、俺はユーカの手を取る。



「ならば、俺も一緒に行こう」


「ふぇっ? は、はいっ」



 顔を赤くするユーカが可愛くて可愛くて、悶えそうになったものの、どうにか理性を総動員させて堪える。



「それで? 何を借りようと思っているんだ?」


「えっと、マナー本の類いと、変化魔法に関する本、ですかね?」


「変化魔法? それなら、俺が教えられるぞ?」



 変化魔法は、ユーカがくーちゃんと呼んでいる猫の姿になる魔法だ。いや、基本的にどんな動物にでもなれるのだが、ユーカは猫が好きらしく、ここ最近は猫以外の姿に変化した覚えはない。



「えっと、その……だった、ジークさん、他の動物に変化できたりしますか?」


「もちろんだ。何が良い? 大抵のものにはなれるぞ?」



 どうやら、ユーカは俺の変化が見たいらしいと分かり、俺は俄然張り切る。



「じ、じゃあ、狼、とかは?」


「……ユーカは、フォレストウルフに襲われていたから、てっきりウルフ系はダメなものとばかり思っていたが……?」


「いえっ、私っ、狼とかカッコよくて、すごく好きなんですっ」



 『好きなんです』『好きなんです』と、頭の中で都合の良い言葉が反響し、俺はあまりの衝撃に固まる。



「そ、そうかっ! 実は、俺が最も得意とするのはウルフへの変化なんだっ」


「そうなんですかっ! ならっ、ぜひ見せてくださいっ!」


「もちろんだっ」



 大喜びのユーカを前に、俺は興奮しながら早速変化を試す。



「これでどうだ? ユーカ?」



 翡翠色の凛々しい顔立ちのウルフ。それが、俺がウルフに変化した場合の姿で、それを見た瞬間、ユーカは目を丸くする。



「ふわぁっ、か、可愛いっ!」


「かっ、可愛い!? カッコいいとかではなく、って、うおぉっ」



 ユーカにギュムッと抱き締められた俺は、不意討ちで香るユーカの甘い匂いにクラッとする。



(っ、ダメだっ、こんなところで理性を手放すわけにはっ!)


「すごい、モフモフっ」



 喜んで撫で回してくるユーカには悪いが、これは危ない。とにかく離れてほしいと告げようとした瞬間だった。



「あっ」



 なぜか、ユーカはいきなり俺から離れてしまう。そして、若干顔を赤くしているところを見ると……多分、このウルフが俺だということを思い出してくれたのだろう。



(良かったような、残念なような……)



 暴走を防げたという面では良かったものの、ユーカが離れていくのはとても寂しい。

 そう思って、少し意気消沈していると、しばらく視線を宙に浮かせていたユーカがこちらに意識を戻してくる。



「えっと、ジークさん。他の生き物には変化できますか?」


「あぁ、ウサギやリスにもなれるぞ?」



 本当は、蛇やトカゲにも変化できたものの、それを言うのは止めておいた。そんなものに変化して、万が一、ユーカに嫌われたら、俺はもう、生きていけない。

 パッと目を輝かせたユーカに、俺はそれぞれの動物へと変化してみせる。そして、リスに変化した後、ユーカは『少し試してみても良いですか?』と言ったので、内容も聞かずに許可をする。



「じゃあ……変化固定っ。ジークさん、これで他の動物に変化してみてください」


「あ、あぁ」



 何がしたいのか分からない俺は、とりあえずユーカの言う通り、変化しようとして……なぜか、姿が変わらないことに気づく。



「これは……」


「えっと、変化した姿を固定してみました。できてる、みたいですね」



 変化の固定なんて、聞いたこともない。しかし、ユーカはそれをやってのけたらしい。ユーカはすぐに、その未知の魔法を解除すると、もう一つ試したいことがあるのだと言う。

 俺はやはり、すぐに許可を出して、ユーカの言葉を待ってみる。



「変化っ」


「? ぬぉっ!」



 ユーカが使ったのは、変化魔法のはずだったのだが……なぜか、ユーカではなく、俺の姿の方が変わってしまい、ウルフの姿へ戻ってしまう。



「やっぱりできましたっ」


「すごいな、ユーカ。相手の姿を変えさせることができるのか」


「はい。もしかしたらできるんじゃないかと思って、調べてみようと思ってたんです。でも、実践できて良かったです」


(いや、調べても載ってないと思うぞ?)



 そんな内心を隠しながらも、俺はユーカの想像力の高さに感服する。


 まさか、この時の出来事のせいで、後々モフモフの刑の際、無理矢理姿を変えられて、その姿を固定されてしまうなど、その時は全く考えもせず、ただただ喜ぶユーカを愛でるのだった。

モフモフの刑に繋がるお話……ジークは、とんでもない墓穴を掘ってましたというお話でした。


それでは、また!(次こそヘルジオン魔国のお話にしますっ!)

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