リドルの片翼(四)(リドル視点)
ブックマークをありがとうございます。
本編も完結したことですし、こちらも更新です。
それでは、どうぞ!
ヴァイラン魔国に戻った俺は、精力的に仕事をこなした。何がなんでもレティシアを口説き落とすため、女性の観察にも余念はない。恐らくは、レティシアは女性らしさがなければいけないのであろうから、裁縫、料理、掃除、洗濯などといった家事から、美容や香水、ファッションに関する知識、女性らしい仕草や話し方を懸命に研究した。
そして、ナリクはナリクで何か収穫があったのか、俺やジークフリート相手に、やたらと高いテンションで会話する練習をしている。俺も、負けていられない。
「あら? どうしたの? ジーク?」
「……いや、変わったなと思ってな」
そして現在、俺はジークフリートに城へ呼び出されて、新たな片翼の衣装を仕立てるために、どんな衣装が良いのか、要望を聞きにきていた。
(でも、また贈れないのかもしれないな)
ジークフリートは、新たな片翼が見つかる度に、装飾品やドレスを作っている。しかし、それが彼女らに届いたことはない。いつもいつも、彼女らはジークフリートを拒絶するのだ。
(俺だったら、耐えられない)
片翼と出会って、初めて、俺はジークフリートがいかに忍耐力のある男であるのかを理解した。この片翼に対する渇望に抗い続けるなど、並大抵の精神力では到底不可能だ。
「これとこれ、後はこっちも、ね? じゃあ、届けるのは二週間後になるけど、良いかしら?」
「あぁ。それとリド。お前が幸せになれることを祈っている。相談があれば、いつでも来てくれて構わないから」
「っ、えぇ、分かった、わ」
疲れたような表情で、それでもそんな言葉をかけてきた親友に、俺はすぐには返事できなかったが、とにかくうなずく。
(俺よりも、お前の方がよっぽど助けてほしいだろうに……)
俺では、力になれないのだろうか? ジークフリートは、ずっと片翼を得られないのだろうか?
神が居るとするならば、どうか、この親友に素晴らしい片翼を贈ってほしい。そう願いながら、俺は、レティを、レティシアを得るために日々を費やした。
「えっと、リドル、さん?」
「何かしら? レティ?」
そして現在、俺……いや、ワタシは、レティの父親であるオルフィーを払いのけ、求婚中だ。
オルフィーは、しぶとかった。何度も何度も、弱い癖に、ワタシに食ってかかって、ぶつかってきた。ただ、レティの父親である以上、そして、精霊王である以上、下手な態度は取れない。とにかくオルフィーが飽きるまで相手をし続けたワタシは、疲労のピークで……それでも、ようやくレティへの求婚の許可を得たワタシは、今、必死にレティの手を取って迫っていた。
「その、近い、ような?」
「ふふっ、そうね。でも、ワタシはもっとレティに近づきたいの」
「え、えっと、その……」
顔を真っ赤にしてあたふたとするレティが嫌がっていないことくらい、簡単に分かる。
「ねっ、レティ。ワタシと一緒にヴァイラン魔国に行きましょう? そして、結婚してちょうだいっ」
「は、はいっ、わ、分かりまし、た」
攻めて攻めて攻め続けて、ワタシはようやく、最愛の人を手に入れることができた。
かけた年月は三年。そして、それから約三百年後、まさか親友二人が一気に一人の少女に惚れるだなんて、思ってもみなかった。そして、それが成就することになるとも。
「あぁ、神よ、感謝します」
ワタシは、あまりの幸せに、ほとんど祈ったこともないような神に感謝を捧げるようになるのだった。
次回は、ちょっとジークのお話を挟んで……ヘルジオン魔国のお話も入れたいところなんですけどね。
それでは、また!