マッドサイエンティストの鼻
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久々の更新です。
それでは、どうぞ!
「ひょーっひょっひょっひょっ」
「やっ」
「へぶぅっ」
やぁやぁ皆さん、元気にお過ごしかな?
現在、僕はカラク所長に付き従って魅了の力を検証するためにこの場にいるわけだけど……まぁ、いつものことというか何というか、所長は、ニナちゃんに鼻を攻撃されて蹲っている。しかし、所長曰く、あのほとんどダメージの通らない攻撃は、それはそれは愛らしくて蹲る価値のあるものなのだそうだ。
(と、いうか、あの攻撃、効いてなかったんだなぁ)
つまりは、シャーッと威嚇しているニナちゃんを前に蹲っている所長は、ニナちゃんの可愛らしさに悶えているだけなのだろう。
とはいえ、ニナちゃんも、何度やってもゾンビのごとく蘇る所長が嫌いなのは本当のことのようで……今日は、少しばかり違ったアレンジが行われていた。
「ひょっ? ひょっくしゅんっ! ひょっくしゅんっ、ひょっくしゅんっ!」
魔術検証課副所長という身分を持つ僕は、主に、所長が放り出す書類仕事で忙しい。しかし、それでも、僕は、所長と同じ穴の狢なのだ。
立て続けに三回、くしゃみをしたカラク所長は、すぐに、異変に気づく。
「ひょ? 鼻が高くなっている……?」
具体的には、鼻の頭の部分が肥大化しただけなのだが、それでも、効果があることは分かった。後は……。
「所長ー、素敵な鼻になりましたね? それ、刺激されれば刺激されるほど、鼻が大きくなるので、気をつけてくださいね?」
「ひょっ!?」
そう告げれば、所長は愕然とした表情でこちらを見る。僕は度々、大切な書類仕事を放棄した所長でストレス発散をしてきたが、そのどれもが、所長にとってトラウマになっている。
「やっ、やっ!」
そんな所長の鼻に、無情にも、ニナちゃんの連続攻撃が炸裂し……所長の鼻は、本来の二倍にまで膨れ上がっていた。
「っ、け、検証は中止だ! 私は、すぐに帰っひょくしょんっ!」
所長がなぜ、こんなにも慌てているのかといえば、今日の所長は、自身の片翼とデートをする約束をしていたのだ。だから、さっさと解毒剤を作らなければ、鼻が肥大化したまま、デートという無惨なことになりかねない。
(いや、むしろ、デートを断られるかも?)
再び、鼻が肥大化したことに青ざめる所長へ、僕は、さらなる絶望を与えることにする。
「あっ、そうそう。今、所長の鼻はとっても敏感なので、くしゃみが出やすくなってますよぉ。それと、解毒しても、鼻を元に戻すには一週間かかります」
「ひょおぉぉぉおっ!?」
「高い鼻が羨ましいとか言う人は多いですし、大丈夫でしょうよ」
慈悲の欠片もない宣告を笑顔で行えば、所長は、一目散に自分の研究室へと逃げ込む。その間に、何度も特徴的なくしゃみが聞こえた気がするが……まぁ、問題はない。
「それじゃあ、ニナちゃん。今日は、ライナード様や、カイト様に迎えにきてもらいましょうねぇ」
ニナちゃんは、少々疲れているように見受けられたので、僕は、彼女を早く帰してあげることにする。
後日、僕の職場で、大きな鼻を押さえながらうちひしがれる所長を見つけたものの……結局、三日で鼻を元に戻すことに成功したらしい。それでも、しばらくは真面目に書類仕事をしてくれたので、大満足の結果に終わったのだった。
鼻がどんどん肥大化する……まぁ、カラク所長にとっては、良い薬だったみたいですね!
それでは、また!




