表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片翼シリーズ番外編  作者: 星宮歌
私、異世界で監禁されました!?の番外編
4/41

『閑話 リドルの悲劇』より 再会(リドル視点)

ブックマークや評価をありがとうございます。


今回で、リドルの悲劇の拡大版は終了となります。


それでは、どうぞ!

 精霊を甘く見ていた。それに気づいたのは、レティの居場所近くへ案内してくれるという下級精霊達に着いていくこと、五時間が経過する頃だった。



(そうよ。精霊は疲れ知らずだったのよね)



 一定の速度を全く緩めることなく進む精霊達に着いていくのは、地味にきつい。けれど、こんなところでレティを諦めるわけにはいかないワタシは、必死に精霊達を見失わないように足を前に踏み出す。

 そして、十時間後。魔族といえど、さすがに疲労で足がどうにかなりそうな状態になってきたところで、ようやく、精霊達が振り返る。



「このあたりー」


「レティ、ちかいー」


「きっといるー」


(きっとじゃなくて、絶対、居てもらわなきゃ困るわっ)



 これだけ歩かされて、全て徒労に終わったとなれば、ショックどころの話ではない。けれど、精霊というだけで、そのくらいのいたずらは仕掛けてきそうなところが怖かった。



「ほ、んと…なの、ね?」


「ほんとー」


「しんじつー」


「だいじょーぶー」



 座り込めばしばらく立てなくなるであろう自信がある状態で、ワタシは気合いを入れる。携帯していた水を口に含み、喉を潤すと、その状態のまま、呼び掛ける。



「レティ、どこだっ、レティ」



 フラフラと歩きながら、ワタシはとにかく呼び掛けることしかできない。



「レティっ、レティっ」



 何度も何度も、声が嗄れてきては、水を飲み、声を張り上げる。

 すでに、明るかった森は、暗闇に包まれて、空には満点の星が輝いている。叫び続けた声は、もう水ではどうにもならないほどに嗄れてきていた。



「レティ、レティっ!」



 と、その時、足も限界だったのか、木の根に足を取られて、盛大に転ぶ。



「うっ……レティ、レティ……」



 森に来るまでは、ほとんど喉を通らないながらも飲み食いしていたものの、今日は森に入ってから、ほとんど何も口にしていない。魔族は、そこそこ体力のある種族ではあるものの、さすがに丸一日叫びながら森をさまよって、無事なわけがなかった。



「レティ……どこに、居るんだ……?」



 見つからない愛しい人を思って、ワタシは立ち上がることもできずにうなだれる。すると……。



「リド……」


「っ、レティ!?」



 愛しい人の声に顔を上げると、そこには、飴色のウェーブがかった長髪に、同じく飴色の瞳をした可愛らしい女性がいた。その服は、精霊らしく、ヒラヒラとした白いドレスで、体の大きさが百七十センチあることから、彼女が上級精霊であることが伺える。



「レティっ、誤解だっ! いえ、誤解なのよっ」



 レティに話しかけた直後、口調が男のものに戻っていることに気づき、慌てて修正しながら、どうにか力を振り絞って、フラフラと立ち上がる。



「……商会のお仕事の後、どこに向かってらしたの?」



 唇を震わせて、緊張気味に尋ねるレティに、ワタシは即座に答える。



「ジーク達のところよ。極秘の頼み事をされていて、毎日通う必要があったのよ」


「……それは、わたくしにも言えないこと?」


「そうね、こんな事態にならなければ、話す許可はもらえなかったわ。……簡単に言えば、ジークとその片翼の子との間を取り持つために動いていたのよ」



 周りに誰の気配もないことを確認して、ワタシはあっさりと事実を明かす。ただ、こんな事態にならなければ、ジークもユーカちゃんのことを隠したかったであろうことは確実だ。



「では、リドが女性もののドレスを注文していたというのは……?」



 飴色の瞳を不安で大きく揺らせたレティのその言葉に、事の発端は、ジークやハミルに頼まれてドレスを注文したことだったのだろうと理解する。まさか、その情報がレティの元に届くとは思っていなかったため、これは完全なるワタシの失態だ。



「どこまで知ってるかは知らないけれど、あれはジーク達に頼まれて、用意したドレスよ。ワタシが贈るものじゃないわ」



 そう言えば、レティは体当たりする勢いでワタシに抱きつき、ポロポロと涙を溢す。



「では、ではっ、わたくしは、リドに嫌われたわけではないのですねっ?」


「えぇ、もちろんよ。ワタシにとってはレティが全てなのよ」



 もう、立っているのもつらい状態ではあったものの、ここでふらつくわけにはいかない。心を痛めたレティを慰める役は、誰にも譲るつもりはない。



「良かった。本当に、良かった……」



 ワタシの胸に顔を押しつけて、くぐもった声で安心したということを告げてくるレティ。その様子に、ワタシは愛しさが溢れて止まらなくなりそうだ。



「レティ、帰りましょう。帰ったら、詳しい話もしたいし、たくさん愛し合いたいわ」


「はぃ……帰ります」



 『愛し合う』という言葉に頬を染めたレティに、ワタシは思わずギュッと抱き締めて、その柔らかな体を堪能する。



「リ、リド? 恥ずかしいですっ」


「もうちょっとだけ」



 そうして、誤解が解けたワタシ達は、しばらくお互いを堪能して……結局、疲労には勝てず、そのまま気絶してしまい、レティを慌てさせるなんて一幕もあったものの、仲良くヴァイラン魔国へと戻るのだった。

次回は、リドルとレティの出会い編を予定してます。


本編でレティが登場した辺りに書こうかなぁと考えていますので、よろしくお願いします。


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ