ニナとハインツ
さてさて、本当は、海斗ちゃんとライナードの後日談、と思っていたのですが、こちらのお話の方が先に完成しましたし、こっちが先の方が良さそうだったので、公開ですっ。
それでは、どうぞ!
「ぎゅー、なの」
「ぎゅー」
「……天使がここに居る……」
「む……俺は複雑だ……」
リュシリーの子供、ハインツは、俺達の養女であるニナととても仲が良い。何をするにも一緒で、ハインツはニナの後ろを必ず、カルガモよろしくついていっている。そして今は、ソファの上でお互いをぎゅうぎゅう抱き締め合っていた。
ニナは現在、ユーカ様の薬で幼女化しているため、その光景は天使の戯れにしか見えない。俺が微笑ましくそれを見る傍ら、ライナードは何とも苦い表情だ。
「まぁまぁ、別に二人が結婚するわけじゃないんだから、仲良しってことで気楽にみようよ」
「むぅ……」
それから約二百年後。ニナは二百歳を迎えて、ようやく成人したのだが……。
「ハインツっ、ぎゅーっ」
「ニナっ、ぎゅーっ」
「……カイト……」
「うん、変わらないなぁ。ニナとハインツは……」
どこか絶望したような表情のライナードに、俺は遠い目をするしかない。どんなに長くとも、片翼の判別ができる年になれば、ニナはここまでハインツにべったりになることはないと踏んでいたのだが……相変わらずのラブラブっぷりだ。
ちなみに、ハインツはピンクの髪に青い瞳、青い角を持つ、人懐っこそうな顔立ちをした可愛い感じの男性に成長していた。ただし、ニナを侮辱しようものなら、絶対零度の視線で様々な手段を用いて相手に後悔をさせる腹黒でもある、らしい。
「ま、まぁ、あと五年もすれば、ハインツも片翼を感じ取れるようになるし、そうなれば、ここまでべったりにはならないだろ?」
「……む……」
渋々。本当に渋々うなずいたライナードは、ハインツを凄まじい形相で睨み付ける。
俺達には、ニナ以外にも女の子が居るのだが、やはり、ニナも俺達の娘だから、父親としてはハインツが憎くて仕方ないのだろう。
それから、さらに五年後。
「僕の片翼。結婚して?」
「うんっ、もちろんなのっ!」
俺達は、たまたま、運悪く、その現場を目撃してしまった。と、いうより、ここは俺達の家で、憩いの場であるテラスだ。俺とライナードがここに来る確率は、結構高い。
恐る恐る隣に佇むライナードに視線を向けると……ライナードは魂が抜けたかのように放心していた。
「……ニナとハインツは、片翼同士だったんだな」
「片、翼……俺の、娘がっ」
よくよく考えてみれば、ニナは二百歳を越えた頃から、さらにハインツとべったりしだした。きっと、あの頃から、ニナにはハインツが自分の片翼だと理解できていたのだろう。ただ、まだ成人していないハインツのために、必死に待っていたに違いない。
「今夜は、お酒、飲む?」
「……飲む」
傷心のライナードをなだめるには、お酒の力を使うに限る。
(お酒を飲んだ後、ライナードは機嫌が良くなるしな)
ライナードが飲む時は、良く俺も付き合うのだが、この体はお酒に弱いらしく、すぐに酔い潰れてしまって、その後の記憶はない。しかし、ライナードは翌日、決まってご機嫌なので、きっと、俺は何かをしてしまっているのだろう。ここは、知らぬが仏だ。
「すぐ、飲もう」
「う、うん」
完全に二人の世界に入ってラブラブなニナとハインツから目を逸らした俺は、ライナードと一緒に、部屋へと戻るのだった。
娘を取られて傷心なライナード。
海斗ちゃんは、ライナードを癒せるのかっ!?
それでは、また!




