表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片翼シリーズ番外編  作者: 星宮歌
俺、異世界で置き去りにされました!?の番外編
31/41

前世と片翼(二)(ローレル視点)

はい、とりあえず、ローレルちゃんの出会いのお話はここまでです。


それでは、どうぞ!

 目が覚めたら、目が潰れた。あっ、間違った。潰れかけた。

 何せ、目を開けた瞬間に飛び込んできたのが……。



「おはよう、ローレルさん」



 なぜか、なぜかっ、私の推しキャラである、ジェド様だったのだからっ。しかも、現状、そのジェド様に膝枕されている模様でもある。



「ふぇえ?」



 変な声が出るのと同時に、私は気づく。



「私、求婚された……?」



 そう、倒れる前、私は誰かに……いや、この際、もうぼかすのはやめよう。ジェド様に、求婚されたのだ。桃色の髪に桃色の瞳、桃色の角を持つ、ジェド・オブリコ様。常に無表情で、敵とみなした者には平気で毒を吐き、呪術を得意とする三魔将の一人。ヴァイラン魔国における、エリート中のエリートである彼を前に、私は、なぜ、こんなことに、という思いをグルグルと抱く。



「覚えていてくれた? 僕の片翼。愛しい人」



 そして、微笑みとともにジェド様が言った『片翼』という一言に、私は凍りつく。



「片、翼……」


(そういえば、良い匂いがしてるけどっ! もう、クラクラしそうな感じだけどっ! その根本はジェド様っぽいけどっ!)



 言われてみれば、とても納得のできる事態。しかし、前世が人間だった影響か、どうしても、片翼だから求婚という図式に引っ掛かりを覚えるのも確かだった。



「たったの四十で魔法局に勤め出して、やっと、親らしいことができると思ったのに……」


「ま、まぁまぁ、片翼がこんなに早く見つかったことは良いことじゃないか」



 と、そこで、両親達の声が聞こえて、私は飛び起きる。



「ローレルさん?」



 『どうしたの?』とでも言いたげなジェド様の様子に、私は、両親にこの膝枕された姿を見られたことへの混乱でとっさに言葉が出てこない。



「あっ、私達はお邪魔でしょうから、ひとまず退散します」


「ローレルちゃーんっ!」



 冷静な父と、なぜか嘆く母。どうやら、二人は私達に気をきかせて退出してくれるらしい。



(それなら、もっと早くに出ていてほしかった……)



 そんな薄情なことを思いながらジェド様に目を向ければ、ジェド様は、『夢愛2』のヒロインにしか向けないはずのキラキラとした笑顔で私を見つめていた。



「どうか、僕と結婚してください。ローレルさん」



 推しキャラで、片翼で、エリートで……断るなんて思いつかないほど、良い条件が揃っているのは分かっていた。しかし、私はあえて言う。



「嫌ですっ!」



 その瞬間、ジェド様の表情が凍りついたのは、多分、一生忘れられない。



「い……や?」


「わ、私は、片翼だからという理由で結婚するのは、どうかと思うんですっ」



 自分の考えを必死に告げてみるものの、気を抜けば、ジェド様に抱きついてしまいそうだ。そして、求婚してしまいそうだ。



「……なら、これから、僕を知ってもらうことにしよう」



 しばらくショックで固まっていたジェド様は、そこで、ようやく起動する。


 それからのことは……もう、毎日がドキドキな日々だった。仕事の送り迎えは必ずジェド様が来てくれるし、休みの日はデートに誘ってもらえるし、すごく、すごく、甘やかしてくれるし……仕事をバリバリとやっていて、それを半ば生き甲斐にまでしていた私にとって、ジェド様は甘い甘い毒のように、どんどん浸透していった。

 そして……。



「ローレル、今度こそ、僕と結婚してください」


「はい」



 三ヶ月後には、ジェド様の猛攻にノックダウンする私が居たのだった。

明日は海斗ちゃんのバレンタインのお話を更新しますね。


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ