表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片翼シリーズ番外編  作者: 星宮歌
私、異世界で監禁されました!?の番外編
3/41

『閑話 リドルの悲劇』より 戦い(リドル視点)

ブックマークや評価、感想をありがとうございます。


遅くなりましたが、三話目の更新です。


それでは、どうぞ!

 試合開始の合図は、下級精霊達の声だった。



「「「はっじめーっ」」」



 その声と同時に、オルフィーは木剣を持って駆け出す。けれど……。



「うわっ」



 ビターンと、オルフィーは小石にでもつまづいたのか、転んでしまう。



「くっ、姑息なっ。ならば、飛んでいくまでっ!」



 何もしていないにもかかわらず、闘志をみなぎらせるオルフィーは、わずかに宙に浮いた状態で迫ってきた。けれど……。


 ヒョイ。スカ。ヒョイ。スカ。


 あくびが出るほどに遅いオルフィーの斬撃をかわすことなど、容易かった。



「よ、避けるなぁっ。正々堂々、勝負だっ!」



 全ての攻撃をかわすと、オルフィーは必死になってワタシに喚き散らす。だから、ワタシはお望み通り、木剣で受けることにするのだけれど……。



「うわぁあっ!」



 軽く受け止めただけなのに、オルフィーは大袈裟なくらい後ろへと吹き飛んでいく。



「ふっ、それでこそ、この私を倒した男っ! しかぁしっ、私は諦めなどしないぞっ!」



 ここまでくれば分かると思うけれど、オルフィーは……と、いうより、精霊は、戦いに全く向かない。魔力を糧とする精霊達は、魔法ですら、攻撃ができないのだ。いたずらをさせたら右に出るものは居ないと言われる精霊だが、戦いの場に置いてはとんだポンコツ具合だ。それでも……いや、だからこそ、精霊の中には戦いに憧れる者がある一定数出てくる。オルフィーは、その一定数の一人だった。



(まぁ、何が面倒かというと、諦めが悪いことが面倒なのよね)



 今すぐにでもレティを捜し出したいものの、オルフィーを無視するわけにはいかない。

 こんなに弱いのであれば、さっさと片をつければ良いだろうと、普通は思うだろうけれど、精霊と対した場合、それではいけないのだ。なぜなら……。



「うわっ」


「あっ、不味っ」



 つい、少し力を入れて木剣を弾き飛ばすと、オルフィーは木剣から手を離して吹き飛んでいく。そして……。



「ふっ、ふふふふっ、これこそ、男の戦いっ! さぁっ、かかってこいっ」



 そう、強敵だと見ると、さらに増長して挑んで来るのだ。

 精霊は、その性質上、疲れるということがない。そして、とにかく執念深い。だから、一度精霊と何かに付き合うこととなると、どこまでもどこまでも、満足するまで離してもらえないのだ。

 ワタシは、レティに求婚し、受け入れてもらった後のオルフィーとの戦いを思い出してげんなりする。賭けているものがレティに関わることであるために、負けることはできない。そして、オルフィーを満足させなければならないということで、三日三晩、戦い続けた記憶がある。



(そんなに時間はかけられないわよっ)



 とにかく、冷静さを求められる精霊への対応。自棄になって、暴れれば、それはそれで精霊の対抗心に火をつけることになってしまう。



(とはいっても、どうしたものかしら……?)



 オルフィーの木剣を受け流しながら、ワタシは早く決着をつける方法を考える。そして……。



「そういえば、レティが『暑苦しいお父様なんて嫌い』と言ってたわね」



 そう言った瞬間、オルフィーは見事に木剣を振り上げたまま固まる。



「レティが……私のことを……嫌い?」


「えぇ、何でもかんでも剣での勝負に持ち込むことが嫌だと言ってたわね」



 これは、嘘でも何でもない。実際に、求婚を受け入れてもらった後に、ワタシがオルフィーと三日三晩戦うことになったのを見て、そう言っていたのだ。

 レティとしては、一日も早くワタシといちゃつきたかったらしい。その理由を聞いたワタシが、色々と我慢の限界を迎えたことは言うまでもない。

 言葉による強烈なダメージを受けたオルフィーは、とうとう木剣を手から落とし、地面に膝をつき、頭を抱える。



「うおぉぉおっ、レティに、嫌われた!? 私がっ!? うおぉぉおっ!」



 効果は抜群。ダメージは甚大だ。これならいけるかもしれないと、ワタシは内心ほくそ笑む。



「それで? 続きはするのかしら?」


「続き、続き……レティに、嫌われる……剣の勝負、嫌われる……」



 真っ青な顔でブツブツと呟くオルフィー。周りの下級精霊達は、戦わないのかとやんややんやと騒ぐけれど、これは、戦いどころではないだろう。そうして、ここらで一つ、提案をするべきだろうと考えたワタシは、ゆっくりと口を開く。



「レティの場所を教えてくれるのなら、今回、勝負をしたことはレティに黙っておくわよ?」


「ほ、本当か?」


「えぇ、もちろん」



 自分に悪魔の角と尻尾が生えたような気がしないでもないけれど、レティのためなら悪魔でも何にでもなってみせる所存だ。



「わ、分かった。レティの居場所を教えよう」



 そうして、ようやく、ワタシはレティの居場所を聞き出すのだった。

リド姉がちょっと黒いです。


でも、戦いによる疲労はたまっているはずっ。


恐らく、次回が『リドルの悲劇』の拡大版の最後に……なると良いなぁと思っています。


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ