表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片翼シリーズ番外編  作者: 星宮歌
俺、異世界で置き去りにされました!?の番外編
29/41

節分蕎麦 *少し未来のお話です(ライナード視点)

こちらは、『俺、異世界で置き去りにされました!?』のお話が終わってからのお話という時間軸の設定にしてあります。


主にイチャイチャなお話ですが……。


とりあえず、どうぞ!

 今年は、カイトと初めて迎える節分。いや、本来なら、前年にはカイトと出会っていたものの、その頃は何かとゴタゴタしていたので、こうして落ち着いて節分を迎えるのが初めてということになる。



「へぇ、こっちにも節分があるんだ」



 俺の部屋でまったりとくつろぐカイトに、節分を祝おうと話せば、カイトはそう返す。



「カイトの世界にもあったのか?」


「あぁ、そうだ。豆まきをして、年の数ほど豆を食べて、後、恵方巻きも食べるな」


「年の、数……八百も食べるのは勘弁してほしい」


「……えっ? ライナードって、いくつなんだ?」



 そう言われて、俺は改めて自分の年齢を思い出してみる。



「確か……八百二十五歳だ」


「はっぴゃく、にじゅう、ご……」



 呆然とした様子のカイトに、俺は何か間違ったことを言っただろうかと不安になる。



「魔族が長生きなのは知ってたけど、まさか近くにそれだけ生きてるのが居るとは思わなかった」


「む? ルティアスもジェドも、俺とそう変わらないぞ?」


「……そっか、魔族、すげぇ……」



 遠い目をするカイトに、やはり、俺は何か間違ったのだろう。ここは、本来の話題で挽回すべきだと、俺は早速口を開く。



「今年は、豆もしっかり用意したし、鬼の面もある。恵方巻きは昼に作るし、節分蕎麦は夜にでも作ろうと思っている」


「へぇ、節分蕎麦っていうのがあるんだ」


「む、温かい蕎麦だ。ネギや菜の花、豚肉なんかを入れる」


「美味しそうだな」


「もちろん、旨い。それで、だな……」


「どうしたんだ? ライナード?」



 ここから話す内容は、本来の節分ではなかったはずの、後から生まれた文化だと言われているものだ。当然、カイトが知らない可能性の方が高い。しかし、カイトと想いを通じ合わせて約一年。そろそろ、俺も一歩踏み出したいのだ。



「その……節分蕎麦は、伴侶同士が食べさせ合うことで、お互いの健康を祈願するというものがあって、だな……」



 そこまで言えば、カイトは会話の流れを察して、頬を赤く染める。



「食べさせ合うって……い、いわゆる、『あーん』?」



 最後の方は、小声だったものの、残念なことに魔族である俺の耳の性能は極めて良好で、隠したかったであろうその言葉を聞き取ってしまう。



「そ、の……カイトが、嫌で、なければ……」


「い、嫌じゃ、ない、けど……は、恥ずかしいっ」


「……試してみても、良いだろうか?」


「っ、こんなことで許可を取ろうとするなよっ」



 顔を真っ赤にして叫ぶカイトに、やはりダメだろうかとしょんぼりしていると、すぐにカイトの慌てた声が届く。



「い、いや、ダメってわけじゃないからなっ? ただ、その、恥ずかし過ぎて……あぁっ、もうっ、何言ってんだ、俺っ」


「そう、か……なら、夕飯は、楽しみにしている」


「お、おぅ」



 許可が出たことで微笑めば、カイトは赤い顔のまま、さっと目を逸らす。

 その日の夕飯は、俺にとって、かけがえのない思い出となったのは、言うまでもないだろう。俺達は、その後、毎年、節分の時は蕎麦を食べさせ合うことになるのだった。

本編がシリアス突入となっていますので、しばらく、番外編はできるだけコメディとか、イチャイチャとかにしたいと思います。


それでは、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ