ひな祭り ジーク&ハミル視点
ちょっと過ぎましたが、魔国流ひな祭りです。
それでは、どうぞ!
桃の節句、ひな祭り。それは、女の子の健やかな成長を祈る日であり……片翼の女性に愛を囁く日でもある。
そんな日に、俺とハミルトンは、とあるものをようやく完成させていた。
「できたな」
「うん、できたね」
「ユーカに見せるのが楽しみだ」
これは、片翼の女性の部屋に飾るもので、ユーカが図書室に居るのを確認して、こっそりと飾っていた。
そして、その時は来る。
「? ジークとハミル?」
最初に、俺とハミルトンが自分の部屋に居るという事実に首をかしげ、次の瞬間、俺達の背後に視線が向く。
「こ、れ……」
「雛人形だ」
「僕達の手作りだよ」
そう言って見せたのは、今日、この日のために作っていた雛人形。俺とハミルトン、そして、ユーカを模した三体の雛人形だ。
「えっ? えっ? 雛人形? 何で、ジークとハミルに、私?」
どうやら、ユーカの故郷にはひな祭りがないらしい。そこで、俺達はひな祭りについて説明する。
「ひな祭りは、女の子の健やかな成長を祈る日で、女性の片翼を持つ魔族にとっては、片翼の女性に愛を囁く日でもある」
「だから、今日は思いっきりユーカを甘やかすからね?」
お互いの仕事の事情で、朝からの甘やかし、とはいかなかったが、その分、今からしっかりと甘やかすつもりだ。
「雛人形は、家族の幸せを形にした人形だから、必ず夫婦、そして、子供が居れば、子供の人形も増やしていくことになる」
「ユーカとの子供ができたら、新しく人形も作るからね」
そう言うと、ユーカは混乱しながらもうなずき、もっと近くで人形を見たいと言い、人形の前まで招いてみる。
「ふわぁ……」
どこか、目をキラキラさせながら、俺達と人形を見比べるユーカ。服装こそ、人形は着物を纏っているものの、顔立ちはそこそこ似ていると思う。俺もハミルトンも、しっかりと力作を持ってきた。ちなみに、ユーカの人形は、俺とハミルトンの合同作だ。
「二人の着物姿……」
ただ、何やらユーカの視線が怪しい。それに気づいた時は、もう遅かった。
「メアリー! ジークとハミルを着せ替えたいですっ!」
「承知いたしました。それでは、お二人を連行致します」
「ユ、ユーカ?」
「えっ? ちょっ!?」
俺達は、あっという間にメアリー達の手によって簀巻きにされ……なぜか合流したハミルトンの方に居たはずの侍女達とともに、延々とユーカが選ぶ衣装の着せ替えをさせられることになる。
「とっても楽しかったですっ!」
「そ、うか」
「あ、はは……ユーカが楽しかったなら、それで良いや……」
若干グロッキーになりながら、俺達は、ユーカを甘やかす計画を完全に崩され、うなだれるのだった。
なぜだろう?
ジークとハミルは不憫な運命しかないような気がしてきました。
そ、それでは、また!




