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0-或る日の早朝のこと
「ドク…!どうしよう…!?」
ようやく玄関扉から顔を出したドクに、ケースケは掴みかかるような勢いで叫んだ。カラカラの口の渇きとあがった息のせいで、声が掠れてうわずった。
冷たい空気が開いた扉の隙間からドク目がけて吹き込み、寝癖で跳ねた茶色い髪がさらに乱される。ドクは眉間に皺を寄せ、分厚い眼鏡の奥で目をしばたたかせながら、
「…なんだよ、こんな時間に」
と、ぼやいた。
彼はまだ明けきっていない薄紫色の空をちらりと睨んだのち、視線をケースケの汗ばんだ額から荒い息で揺れる肩、つま先まで巡らせようとした。が、その途中、ギョ、っとその眼は見開かれた。
背後のリヤカーが目に留まったのだ、とケースケには分かった。リヤカーと、その荷台からはみ出した、真っ白な脚に。
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長くなりそうな気配ですが、何卒お付き合いよろしくお願いします。