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死人と兵士は剣と魔法の世界で旅をする  作者: papaking
グラムタ・最初の街
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紛い物

ニータは鉛を売っている店は知らなかった。

鍛冶屋や錬金術師なら何かに使うかもしれないが、普通の人が買うようなものじゃないから仕方がない。

でも、油を小売してくれる商店は教えてくれて、道もわかりやすく説明してくれた。

やっぱり親切だ。

おいしい食事を食べて存在値も増えた。

たいした量じゃないけど、うれしい。

「いらっしゃい。何の御用かな」

教えてもらった商店はかなり大きかった。

禿げたおじさんが応対してくれた。ご主人らしい。

「油がほしいんですが」

「ランプに使うのかね。鯨油でいいか?」

「いや、何種類か欲しいんです。合うものを探したいので」

「え?」

「大きめの入れ物に一瓶、全部もらえますか」

ご主人は頭をひねりながらそれでも全部の種類の油を入れてくれた。

グラムタに来てから人を困らせてばかりいるような気がする。

豆、綿実、亜麻、鯨油、怪物の脂肪から取った油や珍しい鉱油も含めて十種類ほどで、かなり高くついた。

でも仕方がない。

"ファントム"に飲ませる油を調べなくてはいけないんだ。


また西門に来た。

北は確かに人は少ないけど、逆に目立ってしまう。

西門は人通りはあるけれど、コープス・ハンドが出るあたりなら隠れる場所はありそうだ。

僕は街道を外れ、大きな岩の影で"ファントム"を呼び出した。

燃料タンクに代わる代わる油を入れて行く。

本当は一日一種類にした方がいいのかも知れないけど陶器の瓶をたくさん担いで歩くのが恥ずかしい。

少しづつ入れて確かめてみる。

一応、どの油でも存在値は増えるみたいだ。

でもやっぱりというか、種類によって差はある。

怪物の油は、微妙に数値は増えたけど"ファントム"が嫌な唸りを上げた。

いったい何の怪物から取った油なんだ。

さすが安いだけはある。

もったいないけど、その瓶の油はそっと捨てた。

"ファントム"をあまり困らせたくない。

逆に鉱油はどれも高評価だ。

特に、薄い金色の油は僕には嫌な臭いしかしないけれど、"ファントム"は好きらしい。

問題は、この油があまり店にも置いていなくて、しかも値段もとびきり高いということだ。

困った。

「どれもハイオクタンガソリンってわけじゃない。紛い物さ。気にしたってはじまらない」

また僕のものじゃない独り言だ。

紛い物か。

ハイオクタなんとかはよくわからないけど、それはグラムタでは手に入らないんだろう。

僕は"ファントム"のランプを撫でながら「もっと稼いだらハイオクタなんとかを買ってやるからな」と言っておいた。

もっと都会に行けばあるんだろうか。

あるといいな。

泊まるところもないし、夜はそのまま"ファントム"の中で寝た。


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