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悪意

「グラムタ市会からの返答は如何に」

上座にある人物が問う。

「貴教会に属するベイル子爵なる人物については不知しらず。その活動についても同様。当然、その生死如何についても不知しらず

「ゼロ回答ということか」

「子爵はネーヴェン商会を名乗っておりましたし、本名も明かしておりませんでした」

「さような事はわかっておるわ!」

上座の人物はいらだたしげに机を叩いた。

「市会の親教会勢力はどうした!奴らにいくら注ぎ込んだと思っておるか!」

「代表的な親教会派である金属ギルド長は長年の不摂生が祟り、このほど隠居したとの事です。また、水路ギルド長は会計の不祥事のため引退、市会の事務方でも引退者が相次いでいます。後任はすべて市ホール長の息のかかった者となっており……」

「ライレとか申す痴れ者か」

「はい。たしかに有能ではありますが、昨年まではここまでの影響力はありませんでした。端的に申して、シヴェシュと手を組んだ可能性がございます」

「蝙蝠めが!」

「それだけではございません」

「まだ何かあるのか!」

「ベイル子爵が確保していた標的が生還した件でシヴェシュの子飼いの魔物が関与していると報告申し上げましたが」

「グライムズとやら申す汚らわしき怪物の事か」

「はい。かの者は今回の標的を送り届けた後、アインの街に向かった由。"黒の名簿"に連なる者を順番に訪問する予定と見えます。この件の功績をもって名簿への新規加入を求めるつもりかと」

「それがどうした。しょせんあのようなもの、怪物どもが血盟団を気取っておるにすぎまい」

「仰られる通り、"黒の名簿"だけでは意味を持ちませんが、グライムズを"名簿"側に引き留めておく理由にはなります」

「訳がわからぬ。其の方、シヴェシュの子飼いの魔物と言ったではないか。グライムズとやらも汚らわしい半蝙蝠なのだろう」

「先日の報告は不確かなものでございました。現在はそうは考えておりません。シヴェシュ、ひいては"黒の名簿"とグライムズの仲はそこまで強固ではないかも知れません」

「ふむ……」

上座の人物、ログマリア正教会大司教であるペルザンは心底嫌そうな顔を隠さなかった。

「離間を試みようと申すか。魔物相手に」

「必要とあらば、いかなる手段でも」

「わしは認めんぞ。一時でも交渉しようなど」

「御意。まずは殲滅を試み、叶わねば我らの独断にて」

「手段を選ばぬか。所詮穢れ者よな。下がれ!」

ペルザンは軽蔑を込めて報告者を下がらせた。

しかし、彼の前に平伏する報告者がいかなる感情も表すことはない。


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